2001.2.1
 
「環境と健康」Vol.13 No.2
健康指標プロジェクトシリーズ

卵成熟の生物学
トロント大学 ラムゼイライト動物学研究所
増井 禎夫
 
INDEX
註:本稿は、読みやすく書き改め図などを加えてシリーズ「21世紀の健康と医生物学」第一巻“いのちを創る”の巻頭を飾っている。

講演者紹介:山岸秀夫

 それでは第10回健康指標プロジェクト記念講演会を開催させて頂きたいと思います。本日の増井禎夫先生のご講演は当プロジェクトの主査をさせて頂いております山岸が司会をさせて頂きます。角田幸雄先生のご講演の司会は財団代表の菅原先生にお願いしてございます。簡単に本日の催しについてご説明させて頂きます。私共はプロジェクト発足以来ほぼ毎月公開の例会を開きまして勉強を重ねてきておりますが、本日は第10回を記念する講演会と10回まで講演会を重ねてくることが出来たことをお祝いする祝賀会と2つ予定しております。祝賀会には本日ご講演を頂く増井禎夫先生、角田幸雄先生をはじめ、これまでご講演を頂きました先生方をお招きしております。祝賀会では講演資料冊子をお配りしておりますので活発に講演者の方々を囲んでの総合討論会というような意味で話に花を咲かせて頂ければ結構かと思っております。以上のような次第で講演会の討論時間の延長という感じでございますのでご参加ご希望の方でまだ申し込まれてない方はコーヒーブレイクの時間にでも気楽に受付まで申し込み頂ければと思っております。

 それでは最初の演者の増井禎夫先生のご紹介をさせて頂きたいと思います。増井先生は1931年に京都で出生され第2次世界大戦中の1944年に京都府立第2中学校に入学されましたが、やがて京都府立第1中学校、現在の洛北高校に設立された理科教育の特別 学級に転向されました。ここでの教育計画は承りますと、素粒子論の湯川秀樹先生や遺伝学の駒井卓先生など京都大学を代表する一流の先生方が立案されたものと聞いております。1948年第三高等学校に入学され、その後京都大学理学部動物学教室にて学部と大学院修士の課程を終了され、1955年に甲南大学理学部生物学科助手として赴任され、高谷博先生の研究室でカエルの胚発生の研究をなされました。そして1965年に助教授に昇進されております。1966年エール大学マーカート先生のもとに留学され本日お話頂く卵細胞の分裂を促進する卵成熟因子MPFと細胞分裂抑制因子CSFの存在を発表され、1969年からトロント大学に移られその抽出や性質の解明に努力されました。今日MPFは卵成熟だけでなく酵母のような細胞分裂一般 にも関与する普遍的な細胞周期調節物質であるということが明らかになっております。この間1998年の米国医学会のラスカー賞をはじめ数々の賞を受賞され現在英国王立学会員、トロント大学名誉理学博士でもあります。本日は卵成熟の生物学ということで非常に複雑な生命の発生システムがどのように解明されてきたかのお話を頂いて、後半の角田先生の卵細胞の底力を発揮させるクローン牛誕生の話題までつなげて頂けるものと思っております。それでは増井先生、よろしくお願いいたします。

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