「環境と健康」Vol.13
No.2
健康指標プロジェクトシリーズ |
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卵成熟の生物学 |
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トロント大学 ラムゼイライト動物学研究所
増井 禎夫 |
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MPFの定量 そこで定量を始める為に定量的に細胞質を移植するということを考えまして小さなメスピペットのようなものを作りました。直径は0.1mmほどの管でありまして、これを引き延ばして印を付けて5ナノリーター(nl)が入るようなそういうピペットです。これを使って定量 的に細胞質を移植したわけであります。100個の卵を使いましていろんな量のプロゲステロンを処理した卵母細胞の細胞質を移植していきますと沢山移植すればする程沢山の移植された卵母細胞が成熟するということが分かってまいりました。従いましてどれだけのパーセントで成熟するかということによってどれだけのMPFが移植されたかということ、逆にその移植に使った供与体の細胞質の中にはどれだけのMPFが存在するかということを半定量 的に推定することが出来るようになりました。そうして調べてまいりますと卵母細胞をプロゲステロンで処理して20時間で、ジャーミナルベシクルブレイクダウンが起こっております。その前にMPFは細胞質の中に現れてまいりまして卵成熟が進行中はずっと活性を示しております。ところが受精をいたしますと途端にその量 が落ちてまいります。しかし受精した後でもやはりMPFは細胞の中に少しずつあるということが分かってまいりました。従いましてMPFは減数分裂を引き起こすということがこのことによって分かったわけでありますが、それと同時に分裂しつつある細胞の中にもやはりMPFが存在する。どうしてだろうということを考えていたわけでありますが、そのことをはっきりさせてくれたのは私の学生であったウィリアム・ワッサマンという人がポストドックになって発表した論文です。受精した卵は分裂する直前にMPFの活性が受精した途端にずっと下がるんですが、受精した卵が分裂する直前にまた再びMPFは細胞質の中に現れてくる。そして分裂が終わる頃には無くなってまた次の分裂が起こる前にまたMPFが現れてくるというのが分かってきたわけであります。従いまして1978年にすでにMPFは単に卵の減数分裂のみならず胚の細胞分裂をも促進する因子であろうということが推論されました。そしてその次の年にアメリカのテキサス(Texas)大学のインドから来た人達のグループがヒーラ細胞でもやはり細胞が分裂する直前にはMPFが細胞質の中に出来てくるのである、そしてこれが細胞分裂の引金になってくるという報告をしました。そういたしますと世界中のラボラトリーでいろんな卵を或いはいろんな細胞を使いまして酵母から人間の細胞までウニの卵からヒトデの卵までとにかく減数分裂或いは細胞分裂の起こる直前の細胞を集めまして、それを抽出してその中からMPFの存在が確証されてきたわけであります。
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