2001.2.1
 
「環境と健康」Vol.13 No.2
健康指標プロジェクトシリーズ

卵成熟の生物学
トロント大学 ラムゼイライト動物学研究所
増井 禎夫
 

受精

 従いまして卵母細胞が卵成熟を始めるというきっかけにはホルモンが関与しているということは一応想像されていたわけであります。それは今から40年ぐらい前のことであります。ところがその機構というものが当時は全く分からなかったわけであります。卵巣の中にあります卵母細胞は、初めは非常に小さな細胞なんでございますが、だんだんと成長いたしまして普通 の細胞の何100万倍という大きさの細胞になってまいります。これを卵母細胞成長と申します。この細胞は非常に大きな核を持っております。それを胚胞(卵核胞)、ジャーミナルベシクル(GV)と呼んでおります。やがてホルモンの刺激がやってまいりますと勿論我々高等動物では黄体化ホルモンに当たるわけでございますが、他の動物では違ったホルモンが出てまいります。例えばヒトデでは1メチルアデニンという全くステロイドとは関係のないようなホルモンがやはりこの作用を引き起こすわけであります。さて、ホルモンが分泌されますと排卵と同時にこの卵細胞にジャーミナルベシクルブレイクダウン(GVBD)と呼んでおる現象が起こります。これが減数分裂の始まりでございまして、そこで染色体が凝集いたしまして母親からきた染色体と父親からきた染色体が一緒に対をなして卵の頂点に配列されます。そしてこれが2組みの染色体に分かれ、一方の染色体は第1ポーラボディ(極体)に放出されて退化いたします。残った半分の染色体が卵の中に残ります。そしてさらに次の減数分裂が進みますと、これのまた半分が第2極体に放出され、そして残った染色体はこの中で半数体の核を作るわけでございます。そして受精が起こりますと雄の半数の染色体と融合いたしまして接合核を作ります。それから無限の細胞分裂が繰り返し起こるわけであります。

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