「環境と健康」Vol.13
No.2
健康指標プロジェクトシリーズ |
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卵成熟の生物学 |
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トロント大学 ラムゼイライト動物学研究所
増井 禎夫 |
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卵核胞 その実験というのが私の卵成熟の研究の出発点になりました。彼女のやった実験というのはこういう実験でございます。ここに卵細胞があります。彼女は卵細胞を卵巣片の中からピンセットで濾胞を手でむきましてその卵をシャーレーの中に入れ、その中に脳下垂体をすりつぶしたものを加えます。そうしますと卵成熟が起こります。卵成熟が起こった卵に核の移植を行います。そうしますと核は中でいろんな染色体の構造を作って分裂を始めて、異常な分裂ではありますが分裂する能力が出来てまいります。このことはすでに1900年の初頭になされた実験から得た結論を確証するものでした。その時にやはり卵核胞が大事だということを言っておりましたから、デトラフは卵核胞をまず抜いてそこで脳下垂体ホルモンをかけて成熟させそこへ核を注射しました。しかしそういう核は中では分裂をせずにじっとしております。従いましてやはりこの実験もカエルによって1900年初頭の結論を確証したものであります。それで人工的に針を突き刺しまして卵核胞を中でつぶしまして卵核胞の内容を細胞質と混ぜてみて、そして他の核を注射します。その場合にもやはり卵は分裂することが出来ないのであります。従いましてただ単に卵核胞の内容が細胞質と混ざり合うということだけでは決して細胞が細胞分裂能力を再獲得するということにはならない。その時に何かホルモンの作用が卵に及んでいるのであると彼女は考えました。当時ホルモンというのは細胞にある細胞質の受容体と結合して核に或いは核が直接ホルモンの受容体になっていくのであるという考えが出ておりましたので、そのことを証明する為にホルモンで処理した卵の核胞の内部を取りまして、それをホルモンで処理していない卵に注射しました。そうしますとそれが卵成熟を起こした。従いまして彼女は脳下垂体ホルモンが核に働いてそこで核の転写 を促進する。その転写物質が卵成熟を引き起こす原因であるという結論を出しました。
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