2000.1.6
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14. 老化は遺伝プログラムかすり切れか | ||
学問的に老化と言うのは、生まれてから段々成長し、一人前になったあと、それをピークにしては段々と機能などが落ちていくこの後半の過程を言うので、老化という言葉はふさわしくない加令というべきだとも言われている。もっと広く言えば生長の過程も加令の中に入れてもよいという考えもある。しかし学問として考えると成長の方は細胞が増えたり次々と新しい機能が発達したりで比較的せめ易い。それに対して折角立派に出来上がった生物の機能が段々と落ちていくのは何故かとなると途端に話が難しくなる。そこへこの衰えを何とかおくらせたいという人々の欲望とが重なっていろいろの学説が主張されている。その学説は老化の研究者(加令学者)の数だけあるといわれる位多岐に亘っているが、これを大別すると表題にかかげた遺伝プログラム説とすり切れ説とに分けられる。ネズミは2、3年のいのちだし、犬猫は15年位、これに対して人間は80年とすれば、これは当然生物としての寿命は遺伝によって決まっていると言わざるを得ない。ここで二つの問題が生じる。一つはネズミとヒト等々動物によって寿命が違うのは遺伝的にどんな性質が違う為であろうかという問題であり、もう一つは寿命が遺伝によるとすれば同じ生物種のなかに長寿命系と短寿命系があり、それを決める遺伝子はあるのかという問題である。前者については哺乳動物について寿命と脳重量、性成熟時期、酸素消費速度、細胞の損傷DNA除去修復能、心筋リポクスチン沈着動態等々沢山の研究があり、それぞれ学説の根拠になっているが、いまひとつ決め手を欠いている。寿命遺伝子については短寿命の腺虫やショウジョウバエなどについて可成り研究が進んでいるて幾つかの寿命を決定する遺伝子が見つかっている。しかし、ヒトについてはあそこは長寿の家系だなどというが、遺伝学的には遺伝の関与は確かに存在すると考えられるが、それ以上詳しいことは未だに解明されていない。 これに対して、すり切れ説というのは丁度自動車が段々に故障が重なって遂に動かなくなった、というのを想像して頂ければよい。勿論生物は自動車より遥かに複雑であるから、DNAに注目したり、コラーゲンなどの構造物に注目したり、物によってすり切れ方が異なる。すり切れの原因についてもいろいろの考えがあるし、生体は自動車と違うところは、ある程度は自分で傷を治す能力を持っていることである。ここではそれらを詳細に述べることは止めておく。というのは学説を並べたてることよりも、我々が老化の実態を知り、それに影響している重要な因子に注目することが老化予防にとって一番大切であると考えるからである。それが皆さんの一番知りたいことでもあるでしょう。 以上二つの基本的考えを示したが、老化が遺伝プログラムによるとしてもそれが実際人々によって多少違うのは後者の因子によるところが大きいであろうから、以下このことを念頭において議論を進めていきたい。 |
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