2002.8.1
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20. 不老長寿をめぐって |
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私の長寿研究への関心は学生時代にメチニコフの「長寿の科学的研究」(昭和17年訳書発行)を読んだことに始まるのですが、副業的にしろ本気で老化機構の研究を始めたのは昭和45年です。其の頃長寿とか老化とかを研究すると言えば、そんなものは研究対象にならないから止めなさい、と言われたものです。さて、長寿といっても人の寿命が一体どれだけ伸びるかですが、10年位前までは限界があってそれ以上は伸びないというのが一般的であったように思います。ところが1989年に私達が訳したビヨルグステンの「長寿の科学」では200歳にもなると言っているので、内心困っていました。ところが最近平均寿命はまだまだ伸びるという論説を読んで感心してそれを先月のホームページに紹介しました。 同じように6月8日発行のNew Scientistに「若さの秘薬」という記事があって驚きました。今まで寿命を伸ばす実験がいろいろと試みられていますが、一番確実で、あらゆる生物で可能性の高いのはカロリー制限です。アメリカでは最近猿を用いた実験も行われており、摂取カロリーを30%ほど減らすことで、まだ寿命まで調べるには年数が足りませんが、いろいろの老人性の変化や病気が押さえられていることが分かってきました。人について皆が死ぬまで観察するというような実験は出来ませんので、老化の指標をバイオマーカーとして確立できれば、それを指標にヒトについてもどの程度のカロリー制限が必要かというようなことが分かるかも知れません。 そのようなカロリー制限というような、ヒトにとって余り楽しくない方法によらなくても、何故カロリー制限が寿命を伸ばすのか、その機構が分かればそれを薬で代行する、若さの秘薬が本当にできる可能性が考えられます。この長寿の秘薬については、もうひとつ百寿者に特別関係する遺伝子を見つけて其の働きを薬で代用できないか、という考えがあります。いずれも未だ実現にはほど遠いのですが、不老長寿に向かって科学的な研究が進んでいるのに驚いている次第です。 このようなことを調べるついでにふと思いついてもう一度不老不死に戻って関連する言葉についてインターネットで検索をしてみました。その結果は下の表に示すように驚くべきものでした。世界中の人が不老長寿より不老不死にはるかに多く関心を寄せているということです。幾つか不老不死研究所などというものも紹介されています。人々は不老不死といって一体何を考えているのか、この問題はもう一度改めて考え直す必要があるようです。
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