2001.12.4
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12. 1対1と多対多 |
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私自身が父も兄もがんで亡くしていますので、何処かにがんが出来ていないか何時もきになります。すると今度はがん検診を受けなさいということになります。これもまた1対1なのです。私は腰が痛んだときにひょつとしてこれはがんの転移ではないかと気になりました。幸いそれは老人性の脊椎異常でしたが、整形外科ではそれでしまいです。何処まで行っても1対1の呪縛からは逃れられないのでしょうか。そこで私は多対多という考えを提出したのです。 年を取った私の身体には沢山の故障があります。これに対して沢山の手立てが必要でしょう。それらは別々ではなく互いに関連していると考えられます。このような複雑な多対多の関係を解きほぐしていくのがこれからの医学が進むべき道ではないでしょうか。ことに健康な長寿というようなことを目指す健康科学というようなことを考えれば、ますますこの考えが重要になってくると思います。今のところ未だ私には具体的にこの多対多をどのように進めるべきなのか案がありませんが、まず現状の何でも1対1に分解して取り扱うやり方を反省するところから始めなければならないでしょう。これには今の健康保険のやり方も問題になります。病名と治療を1対1に対応させるところに基礎を置いているのですからこれでは何時まで経っても1対1はなくなりません。 一つの例として私はがんの温熱療法をあげてみました。これは元来1対1的には熱に弱いガン細胞を42−43度に熱して殺そうと言うものです。そこで治療法としてはがんの部位を集中的に熱することを目指してきました。それでもどうしても腫瘍の周囲を加温されてしまいます。これを避けて何とか熱を集中しようと工夫しているのが欧米の状況です。しかしそれはなかなかうまくは行っていません。しかし、これを多対多の考え方でみると事態は違ってきます。どおしても避けれない腫瘍周囲の40度程度の加温は血流をよくしそれが薬剤の到達などを改善するのに役立っているかもしれません。また全身も体温が上がり気味になります。これもストレス耐性を高めたり、エンドルフィン(快適物質)を出させたりして闘病に有利な条件を作っている可能性があります。だから攻める方を何も1に絞らなくても、多でいろいろと働きかけていくほうが良いかもしれません。我が国でのがん温熱療法のよい成績もこう考えると納得できるのではないでしょうか。 21世紀の健康科学はこんなところから始めるべきではないかというのが私の一つの提案です。 |