2007.4.1
 
八十路のつぶやき
 
菅 原  努
  47. 大風呂敷を広げよう
 

 

 「大風呂敷を広げる」とは広辞苑によると、“実際にはできそうにないことを言ったり、計画したりする。ほらをふく。”と書かれています。しかし、またあえて大風呂敷を広げることも、未知の世界に飛び込むときには必要ではないと思うのです。宇宙でも食べさせると言ってカップヌードウルで世界を制覇した安藤百福さん、もっと古くはコロンブスなど沢山例があります。私達の雑誌「環境と健康」も昨年から新しい企画で走っていてとうとう 20 巻になりました。私が数年前から言い出した「いのちの科学プロジェクト」ではこの雑誌に記事を載せるだけでなく、他にいろんな方の尽力で二つのシリーズで出版計画も進めていて、それも着々と進んでいます。しかし、これは反対から見れば、貴方のやっていることは、やたらに雑多なものが入り混じって何が何だかよく分らないと、言われるのではないかと心配します。確かにその面は否定できません。でもあえてこのようにしているのは、未来を見つめてあえて「大風呂敷をひろげているのだ」と言いたいのが今日の話です。

 このような企画に加わっていただいている方々はすべて大學関係者(名誉教授が主ですが現役の者も含みます)です。今まで夫々の専門の分野を専攻してこられましたが、大学を離れて社会を見渡すと、それぞれの専門はそれなりの意味はあっても、さらにこれからの社会から見れば、一つの歯車に過ぎないので、それだけではこれからの世の中はうまく動かない、これからは文理融合だ、いのちの科学だ、と言う私の大風呂敷に巻き込まれて次々と参加していただいて、それらの方々のご尽力でこれが実行できているのです。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 さて、上にも書いた我々の雑誌「環境と健康」の今年の春号(20 巻 1 号)のEditorialに科学と社会の関係をその受容の面から見ていろんな場合があることを論じました。今回これを政治の面から論じたアメリカの本を翻訳出版しました*1。科学を人類の福祉のために活用したいというのは誰も異論はないでしょうが、現在の科学は要素還元的な面が強く、また総てが明らかなわけではありませんから、現実の社会に適用するときには、いろんな問題があり、ことに政治的な影響が極めて大きいことをアメリカの例で示したのです。翻訳に関しては、我々は素人なので、読みやすい日本語にするのに苦労しました。出版としてはこの他に、我々のグループの企画は「いのちの科学を語るシリーズ(東方出版)*2」、「ルネッスサンス京都 21:五感シリーズ(オフィスエム)*3」と多彩です。またこれらと平行して、現実には先行して公開の講演会や討論会を開催しています。そこには時には外国からの講演者も含めて国際化をはかっています。

 でも私自身はこれでも未だ不満で、2004 年から小さい国際フォーラムの隔年に開催を支援しています。そのテーマには世界でいろいろと議論のある問題で、討論と提言が得られそうな、また得られるべき課題を選んで、その分野の専門家に仲間集めをお願いして、企画して頂いています。数日間の議論だけで何かをまとめるのは実際にはなかなか難しいのですが、何時も自分の年齢を考えてこれが最後と思いながら、続けています。今度は今問題の地球温暖化を含めた環境問題を、広い見地から論じてみようと言うものです。ここに至って、今までの活動をふりかえると、「大風呂敷を広げる」とは正にこのことだなあと、半ば反省し、半ば自負している次第です。

 今回は少々出版の宣伝めきましたが、悪しからず。

 

資料

*1 菅原 努監訳:アメリカの政治と科学 昭和堂
*2 いのちの科学を語る・・1 山中康裕著
子どもの心と自然 東方出版
*3

ルネッスサンス京都 21 五感シリーズ 香りでこころとからだを快適に
菅原 努 監修・中井吉英、大東 肇 編 オフィスエム

雑誌「環境と健康」講読はFax:075-702-2141へお申し込み下さい。年 4 冊で3,000円です。

 

 

 
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