2005.8.1
 
八十路のつぶやき
 
菅 原  努
  27. 今度の私の本
 


 私は2001年から財団の理事長として財団の事業で行なった成果をまとめて何冊かの本を出版してきました。それにはある時は編集者であり、ある時は監修者としてでした。シリーズ「21世紀の健康と医科学」は5冊、京都健康フォーラムの成果もすでに3冊になっています。これらは何れも出来るだけ広い読者層を狙ってはいますが、学術書的なものです。これに対して、私自身が永年続けて来た研究成果を社会に役立てたいと考え、一般の教養的なものとしてみんなに読んでもらう本を作りたいと念願していました。

 先ずそれには有名出版社から出すのがよいだろうと、2年前(2003年10月)に岩波アクティブ新書として畑中正一先生と共著で「がん・免疫と温熱療法」という本を出しました。しかし、なかなか思ったようには読まれず、でも昨年末にようやく再版にこぎつけました。なかなか普及しないがん温熱療法の普及の一助になればと思ったのですが、どうやらそれにはインターネットのホームページの方が役立っているようです。

 そこで著者として反省したことは、出来るだけ易しく、分り易く書いたつもりでも、科学者の私自身が書いたのではいくら易しくと心がけても矢張り難しすぎたのではないか、ということです。そこで周りの友人の勧めもあり今度は思い切ってゴーストライターの力を借りる事にしました。私の書いたものとそれへの私の説明と資料をもとに彼が科学者ではなく一般市民の話として私の話を再編成してくれました。かれは自称、文章師といっています。何人かの友人にこうして出来上がった物を読んでもらったところ、これならすらすら読めるし、内容もよく分る、とほめてくれました。その本は

「安全」のためのリスク学入門    昭和堂 2005年8月10日発行

です。この文章師のことはこの本の「あとがき」に紹介しています。もう既にこの本は店頭に出ているはずです。さて、これがどれほど読まれるか、今売れ行きのほどを楽しみにしているところです。放射線取り扱いを論じるときにはどうしても放射線のリスクを論じなければなりません。それでもう20年以上仲間で健康リスクの問題を中心に議論を続けてきました。最近では食品の安全についてもリスクの考えを取り入れようとされていますしJRの事故をめぐって安全は人びとの関心の的です。しかし、その割には安全を護る仕組みを基本的に考え論じることが、ないがしろにされているように思えます。私達の安全とリスクをめぐる私達の永年の議論が、この本を通じて世の中に役立てばと念願しています。なお、この本の印税が幾らかでももらえれば、全部新しく立ち上げたNPO法人さきがけ技術振興会に寄付したいと思っています。皆様のご支援をお願いします。

 


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