2001.12.4
 

2001年12月のトピックス

近藤元治先生のハイパーサーミアの本

菅 原 努

 


 11月のある日曜日、私のオフィスの4階の会議室にこのホームページを通じて問い合わせてこれられたがん患者さん達がお世話になっている医師の先生方に集まっていただいて、相談の会を持ちました。そのときお呼びしたお1人の近藤元治京都府立医大名誉教授から、「こんな本を書きましたから」と頂いたのがこの本です。

近藤元治著
ガンの温熱化学塞栓療法
<息の根を止めて焼き尽くせ>

南山堂 「医学教養叢書」
2001年11月6日発行
¥1,400+税

■ 目 次
(Wordファイル)


 先生は昨年大学を定年退官され、医療法人恒照会藍野病院院長として大学での研究成果を臨床の現場で生かすべくサーモトロンを設置されたところです。私にとって何よりも嬉しかったのは、内科医の先生が私達と一緒になって、いやそれ以上に情熱をこめて、がん治療へのハイパーサーミアの活用を進めようとしておられることでした。私のような基礎医学の者でなく、臨床で日ごろ仲間の医師にも、また患者さんにもよく接しておられる内科の名医がハイパーサーミアの本を書かれた意味は極めて大きいと思います。現場の医師の方々もこれによってハイパーサーミアをもっともっとよく理解し、関心を持って頂ける事と期待しています。

 この本では近藤先生は得意の話術で、臨床の実例から始まり、ガンとは何か、それを攻めるには孫子の戦法ではと難しいところは、架空の医学生Q子君との問答を交えながら肝がん化学療法の研究の経過を解説しておられます。そこでお得意のフリーラジカルも飛び出します。これで治療成績は随分と良くなったが、それでも7センチを超える大きな腫瘍はうまくいかないのです。そこで温熱併用へと発展していきます。著者も書いておられるように、この本は医療関係者だけのものではなく、ガンに悩んでおられる患者さんとご家族にも理解できるように書かれています。

 最後に最近注目されているTumor Dormancy Therapy(化学療法でがんの縮小を目指すのではなく、がんをそれ以上大きくならないように眠らせておくことを目指す療法)に言及し、これにハイパーサーミアが役立つのではないかと提案されています。これは私もかねがね思っていたことで、諸手を挙げて賛成するところです。

 今度こそ、この本が広く読まれると思いますし、それによってハイパーサーミア(がん温熱療法)が広く行われるようになり、患者さんに喜んでもらえるようになることを期待しています。近藤先生は肝臓がご専門ですが、最近では肺がんにも温熱療法が活躍していることは、このホームページの読者はご存知の通りです。臨床家の努力でますます広くこの療法が使われるようになるでしょう。

 註:高橋 豊:Tumor Dormancy Therapy――癌治療の新たな戦略
   医学書院 2000年