2001.3.9 (4.17目次追加)
[English]
 
肺癌とハイパーサーミア
-- あるメール交換の記録から --
 

 

これは平成12年の11月某日の問い合わせに始まり平成13年の2月末までの、肺癌の患者さんの家族と私とのメール交換の記録です。冷静な治療経過の報告とそれについての心の篭もった感情の表現に私は大変な感動を覚えました。新年早々にも嬉しい便りで喜ばせてくれました。そして今もハイーパーサーミア普及に努める私の心の支えになってくれます。(菅原)


目  次

  1. はじまり:平成12年11月22日
    N.K.からホームページ担当へ:がん温熱療法を受けたいのですが。
  2. 平成12年11月24日 
    菅原からN.K.さんへ
  3. 平成12年11月25日 
    N.K.さんから菅原へ
  4. 平成12年12月10日 
    N.K.さんから菅原へ:温熱療法のために病院を移ります。
  5. 平成13年1月4日 
    N.K.さんから菅原へ:治療の効果が出てきました。
  6. 平成13年1月6日 
    菅原からN.K.さんへ
  7. 平成13年1月6日 
    N.K.さんから菅原へ:公開の了承とその感想。
  8. 平成13年1月31日 
    N.K.さんから菅原へ:退院出来ることになりました。
  9. 平成13年2月28日 
    N.K.さんから菅原へ:退院して1ヶ月経ちました。
  10. 平成13年4月5日 
    N.K.さんから菅原へ
 
 

1)はじまり                     

-----Original Message-----
差出人 : N.K.
宛先 : thermot@taishitsu.or.jp <thermot@taishitsu.or.jp>
日時 : 2000年11月22日 12:29
件名 : 肺がんの温熱療法について教えてください

 はじめまして。
 先日(11月20日)、母が肺がん(左上葉 腺がん)の手術を受けました。

 がんは4cmほどあり、検診で発見されたのですが、春の検診では1cmも満たない(そのときはレントゲン写真を見ても発見できず、あとから同じところをよくみるとうつっていたそうです)がんが、秋には もう その大きさだったそうです。

 CTを見る限りでは転移した がんは うつっておらず、血液中のマーカーは 正常範囲なのですが、手術をしてみると、左胸全体にCTにうつらない 小さな転移がんが いっぱい あったそうで、最初は 左上葉切除の予定だったのですが「意味がない」とのことで、原発巣のみを切除しています。

 がんの性質については、今 検査してもらっていて、結果が出るのは2週間後だそうです。 「組織検査の結果が出るまで わからない」とのことですが、肺がんには抗がん剤が効きにくく、有効な方法がないかもしれない、もしかすると半年か1年しか もたないかもしれない、といわれました。

 本人は、がんであることは知っているのですが、転移があったことはまだ話していません。難しい、ということはよく分かっており、病院の先生も できるだけのことをしてくださっていると思いますが、でも、絶対に あきらめたくありません。

 がんに関する本や、このホームページで温熱療法のことを知りました。

 私たちの住んでいる県内の「I病院」でも、温熱療法の治療は受けられるのでしょうか?

現在入院しているのは、県内のN町立病院で、市の済生会病院から先生が来られ、執刀してくださいました。また、院長先生は 大学にもお勤めになられているようです。済生会病院か、大学付属病院のどちらかに 温熱治療のできる設備があれば紹介してもらえれば、よりよい治療ができるのでは、と思いますが・・・

 また、組織の検査の結果が出たときに、今後の方針を決めるそうなので、先生に温熱療法のこともふくめて 相談してみようとは思っています。

 何か いいアドバイスがあれば、ぜひ教えてください。

N.K.

2)11月24日

N.様

 一応お知らせの病院以外に貴県で温熱療法を受けられる病院があるかどうかについては装置メーカーから知らせてもらいます。しかしこの治療には特有のノウハウがあり、その点でお話のI病院のよい評判を聞いています。

菅原 努

3)11月25日

菅原 努様

 お忙しいなか、いろいろと教えていただいて 本当にありがとうございます。

 I病院に直接メールを送ってみて、いろいろ おたずねしたところ、院長先生からも たいへん親切なメールをいただきました。

 菅原さんの おっしゃるように、きっと とてもいい病院なのだと思います。

N.K.

4)12月10日

菅原 努先生

  先日、肺がんの温熱治療について おたずねしたNです。

  皆様のお力添えもあり、12月11日(月)から 母がI病院に転院することができるようになりました。

  温熱治療も すぐに始めてくださるそうです。

  母のがんは低分化腺がんで、進行がはやく 転移しやすい 難しいがんなのだそうです。

  I病院に家族が相談にいったところ、「一日でもはやく」と、院長先生が すぐに入院の手配をしてくださいました。

  母本人には 難しい状態であることは話していませんが、「手術したところ、少し転移していて、見えるものは摘出した。でも、目に見えないがん細胞があるかもしれないので、それを退治する治療をしよう」と話しています。

  手術をしてくださった先生も、家族の意思を尊重してくださり、母にどう説明するか、相談にのってくださったり、すぐに母の病状について記載した紹介状を作成してくださったりと親切に対応してくださいました。

  I病院では、抗がん剤と温熱治療を併用して治療をしてくださるそうです。

  難しい状況ではあるけれど、最善の治療をしてくださると院長先生が話してくださいました。

  「何とかして治療したい」という家族の願いに耳を傾けて親切に対応してくださった菅原先生をはじめとする多くの皆様に心から感謝しています。

  本当に ありがとうございました。

N.K.


5)1月4日

菅原努先生

  先日、肺がんの温熱療法について おたずねしたNです。

  皆様のおかげで、母は 12月のはじめに I病院に転院することができ、温熱治療と抗がん剤で治療していただいています。

年末に母の主治医をしてくださっているM先生から 説明があり、「治療の効果があらわれて がんが小さくなったり 消えたりしている」と教えてくださいました。

  CTを見せていただくと、転院してすぐのCTでは、左右の肺全体に 転移した小さながんが たくさん ちらばっていたのですが、現在のCTでは、がんの数がずっと減って 残っているものも 小さくなっています。

  温熱治療にしても 抗がん剤にしても、ずっと効き続けるというわけではなくて ずっと続けていると(細胞に抵抗力がでてくるなど いろんな理由で)効かなくなってくるということですが、「それまでに できるだけ がん細胞を消していきましょう」と話してくださいました。

  長期間 効いてくれれば、その間に がん細胞が 全部なくなってくれれば、と、願っています。

  ハイパーサーミアのホームページで、「よい治療法がある」「よい病院がある」と知ることができたこと、そして、菅原先生をはじめとする多くの皆様に助けていただいたことに、心より感謝しております。

N.K.


6)1月6日

N.K.様

 新年早々うれしいお便りを頂き有難うございました。ご紹介したかいがあったと喜んでいます。出来れば貴女とのメイルでの交信記録を固有名詞を削除して私たちのホームページに載せたらと思っていますが、如何でしょうか。もうひと月ほど待ってその後の経過も含めてと考えています。ご了解頂けるかどうか、ご返事をいただけると幸いです。

 ご病人をくれぐれもお大事に。

菅原 努


7)1月6日

菅原 努様                              

  メール、ありがとうございました。

  固有名詞は削除してくださるとのことなので、もしよろしければ、ホームページに載せていただければと思います。 

  手術のとき、前の病院の先生から「手立てがない」といわれ、そのまま何もしないでいることには耐えられなくて、必死の思いで 何か治療法はないかとインターネットでさがしました。

  先生方の 温熱療法のホームページを見つけたときは 「あきらめなくてよかった!」と、うれしくて ホームページを見ながら ずっと泣いていました。

  すぐに問い合わせのメールを送らせていただいたものの、先生方は お忙しいでしょうし、なかなか返事はいただけないのでは、と思っていたのですが、すぐにメールでいろいろと教えてくださり、ほんとうに うれしかったです。

  私たちの住んでいるところの すぐ近くに よい病院があり、最新の温熱療法を受けることができるにもかかわらず、それを本当に必要としている患者や家族には なかなか情報が伝わらない、という現状が とてもつらいです。

  私たちと同じように 必死になって治療法をさがしている患者や家族が たくさん いるはずなのに・・・

  病院で「治療法がない」といわれたときの気持ちを忘れることができません。

  もう二度と あんな思いをしたくないし、ほかの誰にも あんな思いは してほしくないです。温熱療法のことを もっとたくさんの人に知ってもらうことができればいいのですが。

  治療の経過について、先生に また よい報告をすることができるよう、願っています。

                             N.K.


8)1月31日

菅原努先生

  母の転院の際には たいへんお世話になりました。

  先生より教えていただいたI病院での治療の効果があり、だんだんと快方に向かってきています。

  主治医のM先生より、治療の経過の説明をしていただきました。

  先月にくらべて 転移していた がんの数が さらに減っており、また 転院してきたときには見られた胸水が見られなくなっていました。また、以前は リンパ節のはれがあったのですが、はれが引いて、CTにうつっているリンパ節の大きさが先月の半分くらいになっていました。また、転院してきたときには 危険な大きさになりかけていた がんが あったのですが、治療の効果で かなり小さくなっていました。

  「とても大きな効果があった」と、M先生から教えていただきました。

  転院してきたときのCTには「無数に」といっていいほどの 小さながんが 左右の肺全体にうつっていたのですが、現在のCTを見ると ずいぶん数が減っており、残っているものも 小さくなってきているのが はっきり分かりました。

  今後のことについて先生と相談させていただき、退院して 通院しながら 温熱療法と抗がん剤の治療を続けることになりました。

  まだ小さながんが たくさん残っているので、油断はできませんが、それでも 転院してきたころの状態よりも ずっとよくなっており、「何かいい治療法はないか」と必死になって探していたころのことを思うと、まるで夢のような大きな効果です。

  治療が効き続ける期間には 個人差があり、ずっと効き続けるということではないそうですが、効果が続いているあいだに できる限りたくさんの がん細胞を退治できるよう、最善の治療をしてくださるとのことです。長い期間 効果があってくれればいい、がん細胞が全部消えてくれたらいい、と願っています。

  温熱療法のおかげで、また、よい病院を教えていただいたおかげで 大きな効果とともに 本人や家族に とても大きな希望も与えていただきました。

  すばらしい治療法を研究してくださり、開発してくださって、ほんとうに ありがとうございました。

  母が元気になってくれるよう、そして、母と同じ病気の方々も よい治療法があることを知ってくださるよう、祈っています。これからも、母とともに がんばっていきたいと思います。

N.K.


9)2月28日

菅原努先生

  母が退院して 約1ヶ月になります。
  おかげさまで 体調も よくなってきており、家でのんびりと過ごしています。

  今日、主治医の先生より 治療の経過について教えていただきました。温熱治療と抗がん剤の効果によって 残っていた がんが さらに小さくなったり消えたりしてきています。CTを見せていただくと、転院してきたときとの違いが はっきりと分かりました。

  リンパ節に転移していた がんも 小さくなってきていて、リンパ節の大きさが転院してきたときと比べて3分の1くらいになっているそうです。

  まだ 小さな がんが 少し残っていますが「温熱治療も 抗がん剤も いずれ効果がなくなるときがくるけれど、効果が続いている状態を できるだけ長く続けられるように がんばりましょう」と 話してくださいました。

  効果が長期間 続いてくれて、がん細胞が 全部 消えてくれたらいいと願っています。

  温熱療法のおかげで こんなに大きな成果があり、まるで夢のようです。
  すばらしい治療法を開発してくださり、また いい病院を紹介してくださって ほんとうに ありがとうございます。

N.K.


10)4月5日

菅原努先生

 今日、母の主治医の先生からCTの検査の結果について 説明がありました。

 今回は両親が説明を聞いたのですが、転移していた がんが ほとんど きれいに消えているそうです。

 転院してきたときには すこし大きくなりかけていたものも あったのですが、それも かなり小さくなり、CTに かすかにうつっている程度になっているとのことです。

 今までは 家族だけが説明を聞きに行っていたのですが、今回は「とてもよくなっている」ということで、母もCTを見て 説明を聞いたそうです。

 他のところもCTをとってもらったところ、転移はなく、子宮筋腫と思われるものがあって 後日検査をすることになりましたが、それは がんではないから、ということでした。

 転移がみつかって 必死に治療法をさがしながら「なんとかして治したい」と ずっと そのことを願っていました。今日、検査の結果について 父から電話があったときには、ほんとうに 夢のようでした。

 温熱療法の装置の開発は 菅原先生をはじめとする 多くの先生がたの 長年の研究の成果であるとうかがっています。 ほんとうに ありがとうございました。

 温熱療法について知ることができ、皆様のおかげで この病院で治療していただくことができ、そのおかげで こんなに大きな効果がありました。

 母と同じ病気のかたで 同じように温熱療法を必要としているかたが まだまだたくさん おられるのではないかと思うのですが・・・

 こんなに すばらしい治療法なのに、「必死でさがして やっと見つけることができた」というのが 現状でした。

 温熱治療を知ることができなかったら どうなっていたか、ということを考えると、「情報が伝わっていない」というのは ほんとうに 怖いことだと思います。

 どの患者さんも「いい治療法がある」ということを すぐに知ることができ、最善の治療を選択することができるような状況に はやく なったらいいのですが。

 残っている がんは ごくわずかになっているとのことですが、まだ油断してはいけないのでは、と思っています。

 これからも母といっしょに がんばっていきたいと思います。

 菅原先生や病院の先生がた、いつも母を見守ってくださっている皆様に 心から感謝しています。

N.K.


お問い合わせ先: thermot@taishitsu.or.jp