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刊行の辞
ヨーロッパを旅すると、とある街角の広場で古代ギリシャのアゴラ(広場)を髣髴とさせるような光景に出会うことがある。大道芸人が群がる広場の中央で、入れ代わり立ち代わり自説を演説する人を取り囲む熱心な聴衆とその対話である。しかし昨今のわが国ではこのような個人の意見を日常解りやすく受信できる機会は少なく、多くはマスコミやインターネットを通じて得る情報に頼っているのが現状である。
本シリーズはこのような現状に風穴を開けようとして企画された。「いのち」をテーマとして、文理の枠にとらわれず、著者がアゴラの聴衆の代表者としての編集者に熱く語りかけ、ライターがその様子を対話も含めて聴衆の目線で記録し、広く読者に発信しようとする試みである。読み物ではあるが、読者があたかも著者の演説に耳を傾け聞き入ってしまうようなものを目指している。
財団法人体質研究会
財団法人慢性疾患・リハビリテイション研究振興財団
両健康財団グループ「いのちの科学を語る」編集委員会 |
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■ いのちの科学を語る 1
「子どもの心と自然」
著者:山中康裕(京都大学名誉教授、京都ヘルメス研究所長)
\ 1,500 +税 2006 年7 月25 日発行
ISBN4-86249-016-6 C0311
本書は心の専門家である著者が、子どもたちの心に何が起こっているのかを示し、「子どもたちの瞳に輝きを」をキャッチフレーズとして、その生き生きした未来への取り組みを語る。
第1章 |
ここまできた子どもたちの現状
1. 「少年A」は何を問いかけていたのか
2. 「いのちはリセットできる」という誤解
3. なぜ子どもが「モノ扱い」されるか |
第2章 |
死と生を見つめる子どもたち
1. 「心の危機」から生まれる創造性
2. 子どもたちも「存在の根源問題」に直面する
3. 仔犬が教えた「生きる」ということ
4. 「ただ存在すること」の大切さ |
第3章 |
見えなくなってきた心の「窓」
1. 限界が来た「窓」論
2. 「暴力の全否定」が暴力を呼ぶ
3. おろそかにされる「宗教性」
4. 『千と千尋の神隠し』が教えるもの
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第4章 |
心の流れを蘇らせるために
1. 薄れゆく「自然との関わり」
2. 「カウンセラー」が目指すもの
3. 「川との絆」を結び直す
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■ いのちの科学を語る2
「痛みを知る」
著者:熊澤 孝朗(愛知医科大学医学部痛み学(ファイザー)寄附講座教授)
\1,500 +税 2007 年 12 月 25 日発行
ISBN978-4-86249-084-1 C0347
傷の症状として起こるのとは違った、神経系に発生した病気としての痛み「慢性痛症」のしくみをわかりやすく解説。「痛み学」の先駆である著者が、医療者・患者・医療行政者に向け「痛み治療」への学際的アプローチを提案。
第1章 |
痛みの新しい考え方
1. 「痛み」の概念が変わった
2. 欧米の「痛み」への取り組み
3. 「痛み」とは何か?
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第2章 |
痛みのしくみ
1. 痛み系の役割とその性質
2. 痛みの入り口
3. 痛みの伝わり方
4. 鎮痛系とハリ鎮痛
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第3章 |
痛みが病気? 慢性痛症
1. 慢性痛症では何が起こっているか
2. 先取り鎮痛・モルヒネについて
3. 運動系と慢性痛症の関わり
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第4章 |
痛みにどう取り組むべきか
1. 学際的痛みセンターとは
2. 日本の痛み医療の遅れ
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■ いのちの科学を語る3
「虫と草木のネットワーク」
著者:高林 純示(京都大学生態学研究センター教授)
\1,500 +税 2007 年5 月7 日発行
ISBN978-4-86249-066-7 C0345
私たちの住む緑の地球上には、驚くほど多様で不思議な生物間の関係がある。身近にある植物と昆虫たちの不思議な関係を中心に、匂いによるコミュニケーションと相互作用の仕組みを平易紹介、生物間の多様な関係性の世界へ案内する。
第1章 |
化学生態学への招待
1. 虫たちのシグナル
2. フェロモンによる伝達、その応用
3. 虫たちの生態と化学物質
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第2章 |
植物と害虫と天敵の不思議な関係
1. 植物の「SOS」信号
2. 天敵を呼ぶ匂い
3. 匂いのメカニズム
4. 実験室から野外へ
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第3章 |
虫たちの多様なネットワーク
1. 匂いと産卵選好性
2. 昼と夜の植物の匂い
3. 植物間の害虫警報
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第4章 |
持続性可能な農業技術の開発へ
1. 遺伝子組み換え技術の可能性
2. 天敵利用で農業を減らす
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■ いのちの科学を語る4 New!
「チンパンジーの社会」
西田利貞(京都大学名誉教授・日本モンキーセンター所長)
\1,500+税 2008年9月3日発行
ISBN978-4-86249-128-2 C0345
チンパンジーを観察し、ヒトとの共通祖先の姿を探る。40年以上も野生チンパンジーの生態を観察しつづけてきた著者ならではの、平明で深い分析と貴重な写真53点を満載。野生チンパンジーの魅力を語り、ヒトとの共通祖先が持っていた行動を再構成し、現代の文明批判を展開する。
第1章 |
なぜ、野生のチンパンジーを研究するのか
―――「共通祖先の復元」をめざして
人類の祖先の姿をさぐるために
人間とチンパンジーは非常に近い生き物 他
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第2章 |
チンパンジーの集団について
―――集団内での関係、集団どうしの関係
チンパンジーに「家族」はあるのか?
「家族」が見当たらない 他
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第3章 |
集団のリーダーについて
―――強さよりも「ハッタリ」が大事
リーダーになれる条件
長期政権リーダーの「貫禄」 他
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第4章 |
チンパンジーの一生
―――オスは出世競争、メスは年功序列
赤ん坊期は頼りない
チンパンジーの子供はすべて自分で見て学ぶ 他
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第5章 |
一日の生活と性行動
―――食事と睡眠が中心の生活、交尾時間はわずか七秒
太陽とともに起き、眠る
木の上でベッドを作って寝る 他
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第6章 |
チンパンジーの食生活
―――一日二回、集まらないけど同時に食事
同時刻にバラバラに食事する
どんな食べ物を食べるか 他
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第7章 |
チンパンジーの文化
―――地域によって行動が違う
動物にも文化はあるか?
「岩の水中投下」はマハレの文化? 他
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第8章 |
「騙し」と「遊び」
―――詐欺も戦争も太古の昔から?
チンパンジーの詐欺事件?
子供が母親をあざむく 他
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第9章 |
チンパンジーの森と地球を守るために
―――持続可能な社会と地球人口問題
エコツーリズムで類人猿の生態に触れる
チンパンジーを見たことがなかった村人 他
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■ いのちの科学を語る 5
「いのちの医療」心療内科医が伝えたいこと
著者:中井 吉英(関西医科大学心療内科学講座教授)
\1,500 +税 2007 年12 月5 日発行
ISBN978-4-86249-089-6 C0347
心療内科が対象とする疾患はストレス関連身体疾患(ストレスが要因となっているからだの病気)です。心療内科に対する誤解と偏見を解き、真の心療内科とは何かを示す。患者さんの病気の部分だけを診るのではなく、身体や心、社会や環境、スピリチュアリティを含めた全人的医療の実際を紹介。
第1章 |
泉のささやき――心療内科との出会い
1. 心療内科とは――「心身一如」の全人的医療
2. 「システム」を治さなければ、病気は治らない――慢性痛、生活習慣病の問題
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第2章 |
渓流のせせらぎ――人間全体を診る
1. どのように診察、治療していくか――胃潰瘍の患者さんを例に
2. 人間の五感を総動員して症状を診る――内科的診察の実際
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第3章 |
大河のたゆたい――医療のあるべき姿へ
1. 患者さんを受け止め、支えていく――一般心理療法について
2. 医師の物語、患者の物語――ナラティブということ
3. 「人間中心の医療」への道――「医学」と「医療」のはざまで
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第4章 |
海原へ、そして空へ――「いのち」の深みと広がりに触れる
1. 人生の四季に応じた生き方――ライフサイクルを考える
2. 「生命」から「いのち」へ――スピチュアリティへの気づき
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