2006.3.1
 
Books (環境と健康Vol.18 No. 5より)

菅原 努著
「安全」のためのリスク学入門


昭和堂 ¥1,600+税
2005年8月10日発行
ISBN4-8122-0528-X

 


  
 「言葉が一人歩きする」といいますが、全く同じ一つの言葉が個々人の過去の経験と知識によって様々に受け止められ、ある人にとっては心地よく、ある人にとって不快に感じられることは良くあるものです。特に、その言葉が死を予感させるものであればそうした傾向は強く現れます。その意味で、最近、私達を取り囲む生活環境にある放射線、紫外線あるいは化学物質などの因子が私達の健康にどの程度の危険度があるかを一言で表現する言葉として使われる「リスク」という言葉は見逃せません。しかし、この言葉は、その意味が十分に理解されず、マスコミを通じた過剰な情報がむやみに危険意識を駆り立て人々に「安全」についての正確な判断を妨げ、原子力発電や環境問題を考える上で大きな障害となっています。

 こうした時期に、最近発刊された菅原努氏による「「安全」のためのリスク学入門」では、氏の半世紀を超える放射線生物学者そして我が国における「リスク学」の専門家としての活動から得られた確固たる信念が、私達の周辺で起きる身近な出来事を例にして平易に解説されています。この書は、私達が生活の中で真の「安全と安心」を達成するにはどうしたらよいかについて、一般人から科学者まで幅広い層にそれぞれ納得ゆくヒントを気付かせるものとなる良書でしょう。

渡邉正己(京都大学原子炉実験所 教授)