Books (環境と健康Vol.18
No. 4より)
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山折哲雄 編著
環境と文明 新しい世紀のための知的創造 |
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NTT出版 ¥3,800+税
2005年7月1日発行 ISBN4-7571-4118-1 C3040 |
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さらに私にとってショッキングだったのは、ブラウンを批判したデンマークのロンボルグへの世界の対応です。ロンボルグは統計学者でブラウンの使った資料を統計学的に検討し、ブラウンは誇張しすぎていると批判したのです。これに対して Nature, Science、Scientific Americanもロンボルグ批判の論説を張ったのです。しかし、後にその批判は殆ど当たっていない事が明らかになったのだそうです。私が普段信用して愛読しているNatureやScienceにそんなことがあったとは驚きでした。 これが第一部で、次の第二部は「新しい文明の創造のために」をテーマにした討論の記録です。狙いはそこで日本の果たすべき役割、それには日本文化とはどんな特質を持つのか、と言ったことが、何人かの問題提起の話に続いて議論されています。そこでは私たち自然科学者には、何かと驚くような言葉が次々とでてきます。例えば「重い歴史と軽い歴史」「パクス平安・パクス江戸」など。第一部にも内的環境(心の中の環境のオメージ)、外的環境という言葉があります。また稲作漁労文明と畑作牧畜文明とが対比され。前者は持続的だが、後者は環境破壊的でいずれ衰えると言う事のようです。日本がどちらに属するかはよくお分りでしょう。 第二部の議論は、第一部が自然科学者と一緒に議論が出来そうなのに比べて、第二部は一寸違うなあと感じました。自然科学では原理なり法則なりが大切で、それを誰が言い出したか、または発見したかは、科学史としての興味はあっても、議論そのものには直接関係しません。しかし、この第二部の議論を観ていると人名が次々と出てきて、それを批判したり、それを踏まえて自分の説を唱えたり、といったように議論が展開されます。前者は実験や再現が可能という前提で議論が進められますが、後者は歴史に見るように何か普遍的なものがあるはずだとの思いはあるのですが、一回きりのことなので、その説が正しいかどうかは、済んで見なければ分らない、ということでしょうか。それにしても文科の人の学識の深さには感心します。そこで、私はむしろ理系の人にこの本を読んでもらって、文系の議論の進め方を理解する努力をしてもらったらどうかと、感じました。私たち独自の科学を打ちたてるために。 菅原 努(編集委員)
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