2000.4.1

 

  9) 穀類
 

 

  今までは食物の中の成分を中心としてがんとの関係を論じてきましたが、ここからはより実際に食べる食物の形で分類してそれとがん出来ればその他の病気との関係も含めて解説しようとおもいます。その主な根拠は最初に示したのと同じ国際機関の1997年の報告書です。

 穀類の主なものは、われわれになじみの深いのは小麦、米、とうもろこし(コーン)などですが、その他に世界的にはキビ、モロコシ、大麦、燕麦、ライ麦などがあります。これらは何処でも主食となっています。一般的に発展途上の国では穀類が食餌の量、エネルギー共に中心となっています。それが社会の工業化が進むにつれて食物の量がへり、よりエネルギーの高いものになり、穀類もより精製され、加工されたものになっていきます。そこで穀類の消費は全エネルギーの70%から少ないところでは20%位に減ります。

 穀類とその加工品は澱粉を主とし、いくらかの蛋白を含みます。その他の成分の量はその精製の度合いと処理の仕方によって変わります。線維、脂肪ミネラルその他の生活性物質はその大部分が胚芽に含まれていますので、精製をすると減少します。

 穀類とその精製品のがんとの関係は明確ではありません。その理由は多分穀類の精製の度合いが一定せず、また穀類の豊富な食餌ではたの成分の欠乏を招きやすい、ということではないかと考えられます。ただ言えることは、全粒穀類は胃がんのリスクを下げる可能性があり、反対に極度に精製した穀類は食道がんのリスクを増す可能性があると言うことです。

 なお、今では殆ど見られませんが、白米ばかり食べていると脚気に、トウモロコシばかりではペラグラ(ニコチン酸欠乏症)にばります。WHOもがん以外の心血管病などを予防するために50〜70%の種々の澱粉と一日16〜24gの食物繊維を撮ることを奨めています。

穀類とがん

証拠
がんリスクを減らす
関係なし
がんリスクを増す
確信出来る      
可成りの      
可能性あり 全粒穀類(胃がん)    精製穀類(食道がん)
不十分 穀類 (大腸がん)    

註1:

欧米で行われた6の症例対照研究が穀類及び穀類製品が胃がんに対して防護的な関連があることを示している。

註2: 大腸がんについて13の症例対照研究があり、そのうち半分はリスクを減らし、半分は関連がないというように一定しない。全粒穀類や穀類製品が大腸がんに対して防護的でることは理論的には考えられることである。
註3: 食道がんについては9の症例対照研究がトウモロコシ、小麦、キビなどの穀類がリスクを増すことを示している。この関連は貯蔵穀類の菌類による汚染が原因である可能性が考えられる。このことは動物実験でも認められている。
註4: 穀類は勿論そのままの形でも食べられるが、今では白米、小麦粉からのパンやパスタとして食べるのが普通である。この点を区別して行われた疫学は少ない。穀類はその精製の過程で線維、脂肪ビタミンミネラルを失う。また反対にパンには食塩や砂糖が追加されることがある。そこで全量穀類そのものががんのリスクを増すということは先ず考えなくてもよく、むしろ防護的と考えたほうがよいであろう。

 

 
 
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