平成16年健康指標プロジェクト講演会要旨 |
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第50回例会記念講演会
「知のフロンティア−健康といのちの科学をめざして」 (7月3日(土) 13:00〜17:00、「芝蘭会館」稲盛ホール) |
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閉会挨拶 医学・医療を考える |
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鳥塚莞爾 ((財)体質研究会理事長、 元福井医科大学学長、京都大学名誉教授) |
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最近の画像診断学は身体の中の様子を鮮明な画像として描写し、病巣の形や大きさなどの形態の変化をとらえるだけでなく、機能も画像として描写されるようになっています。 医用画像は1895年、レントゲンによるレントゲン線(X線)の発見に始まります。ついで1898年、キュリー夫妻による放射性同位元素(ラジオアイソトープ、RI)であるラジウムの発見があり、また1946年、ブロックらによりNMR(核磁気共鳴)現象が発見されました。 X線の医学利用は単純撮影に始まり、造影撮影、断層撮影、間接撮影、X線テレビへと発展しました。1970年代にいたりX線CTが登場し、全身の各部位、各臓器の断層像が得られるようになり、その後、ヘリカルCT、マルチスライスCTが出現し三次元画像の作成が短時間に行われるようになっています。 RIの発見によりRIをトレーサ(追跡子)として用いる核医学が発展しました。核医学画像は各臓器に親和性のある薬にRIを目印としてつけた放射性薬剤を人体に投与し、その目的臓器に集積後、専用カメラ(シンチカメラ)を用いて臓器を画像として描写し、臓器の形、位置の情報および臓器内のRI分布により臓器の局所機能情報をも提供します。更にRI断層像の作成、すなわちエミッションCT(ECT)が行われるようになりました。ECTは99mTcO4−、123Iなどのγ線放出核種を用いるシングルフォトンECT(SPECT)と11C、15O、18Fなどのポジトロン放出核種を用いるポジトロンECT(PET)に大別されます。また最近は、PET−CTスキャナの臨床利用が始まり、PETによる機能画像とCTによる形態画像との融合画像が短時間(10分程度)で作成されるようになっています。 1973年、ローターバァらによりNMR現象の臨床利用が始められ、MR画像(MRI)が作成されるようになりました。MRIは強力な磁石のN極とS極の間に人間を寝かせ、特定の周波数の電磁波を照射して人体を構成している多数の元素のうち特定の元素だけを共鳴させて信号を発生させ、この信号を集めて人体の断面を画像にするもので、病巣や組織の識別能にすぐれています。最近、短時間での撮像が可能になり、MRIは形態情報だけでなくファンクショナルMRIにより機能情報をも提供するようになっています。また上記のPETと共に分子イメージングによる病態解明の研究が進められています。 また超音波検査(US)が行われます。USは超音波を生体内に発信すると音響的に性質の異なった組織や臓器の境界面で反射がおこり、そのエコーを受信して画像にするものです。また内視鏡を食道、胃、大腸、気管などに挿入する内視鏡検査が行われます。 昭和40年頃までの医用画像は病気の結果としてあらわれる形態異常に基づく陰影を観察していましたが、最近は上記のように病気による形態と機能の異常の情報が直接に得られるようになりました。そして病気の早期発見、治療法の選択、治療効果の予測および判定など、臨床上きわめて有用な情報が提供されるようになっています。 一方、画像診断学は、その細分化と共に一人の医師がすべての画像を読影することが困難となり、また一人の患者について200〜300枚程度の画像が作成され、その読影は大へんな作業となり、画像読影の分担などが行われています。 以上のように、画像一辺倒になって、患者を忘れることが画像医学の分野でも起こっています。科学の発展と共に医療機器も益々発展し、細分化、精密化されて、上記の傾向は今後、益々大きくなると考えられます。 医の倫理、医師としての心得については、昔から多くの人々により多くのことが云われています。医聖ヒポクラテスは「医学は、人間とは何かを知ることである」「医学はアートである」と述べられ、最近では沢瀉久敬先生は、その医学概論において、「医学の哲学の重要性」すなわち、「広く医学的知識を獲得しながら、その博学に満足せず、さらに顧みることが重要である」と述べられています。 「健康効果指標プロジェクトの第50回記念講演会」において、小川先生、尾池先生、井村先生のご講演を頂き、この講演会を出発点として、文理融合型サイエンスの推進を目的とした「いのちの科学」のプロジェクトが発足いたします。新しいプロジェクトの発足にあたり「医学・医療」をあらためて顧みなければならないと考えています。このプロジェクトが多大の成果をあげることが出来ますよう関係各位のご指導、ご支援をお願いして、閉会の挨拶と致します。
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