平成16年健康指標プロジェクト講演会要旨 |
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第49回例会
(5月15日(土) 14:00〜17:00、京大会館211号室) |
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不定愁訴に対する漢方医学の考え方 |
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新谷卓弘 (近畿大学東洋医学研究所) |
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過剰適応は心身症患者に最も多い適応状態だが(典型例は、上司から無理難題を課せられ徹夜しながら頑張ったところ、胃や十二指腸に潰瘍などの器質性疾患ができてしまった場合)、漢方外来を訪れる器質性疾患のない不定愁訴患者にも多いことが判明したのである。 東洋医学では病気の原因を内因、外因、不内外因の3種類に分けて考える。特に内因は七情といって、怒り、喜び、思い悩む、憂える、悲しむ、恐れる、驚くといった七つの感情が五臓(肝、心(しん)、脾、肺、腎)に影響を及ぼして病気を生むとしている。すなわち、怒りすぎると肝が障害され、喜びすぎると心が障害され、思い悩むと脾・胃の調子が悪くなり、くよくよ憂えたりひどい悲しみにあうと肺が障害され、恐ろしい目やひどく驚くと腎が障害されると、古代中国人が多数例の人間観察から導きだしたのである。よって、こころの持ちようで病気になったり健康でいられたりする「心身一如」の考えを東洋医学では大切にしているのである(心療内科では心身相関に相当する)。 この心身一如を裏付ける根拠として、臓器移植を受けた患者の心身に変化があらわれるという事実がある。すなわち、『記憶する心臓』(クレア・シルビアとウィリアム・ノヴァック共著、角川書店)に心肺同時移植を受けた後で趣味や嗜好が180度変わった事が記載され、その他の臓器受容者にも術前とは全く異なった言動をとる人々が数多く実在することが報告されているからである。 一方、生体にはもとより自然治癒力があるため(東洋医学では生体を防衛している氣血水(きけつすい)という生命エネルギーを動員する働きが備わっていると考える)、様々なストレスに対して生体を防御しようとする。この生体の防衛力をいかに活かすかという点で、現代医学はややなおざりになっている感がある。 本講演では漢方医学の「心身一如」の考えをもとに、不定愁訴患者の氣血水の失調をどのようにとらえ、いかに治療して行くのかについて述べたい。
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