2004.1.5
 

 平成16年健康指標プロジェクト講演会要旨

第46回例会
(1月17日(土) 14:00〜17:00、京大会館102号室)

臨床研究の新しい見方
ー要素還元主義からシステム論的健康観へー

竹林直紀
(関西医科大学心療内科学講座)
 


 近代西洋医学における実際の診療行為の多くが科学的根拠に乏しく、有効性が証明されているものはわずか10〜20%にすぎないという報告が1978年に米国でなされて以来、根拠に基づいた医療 (evidence-based medicine: EBM)の重要性が強調されるようになってきた。このことは、臨床現場での西洋医学中心の医療行為の大部分が実は経験的な要因を基に成り立っているにもかかわらず、科学的根拠があるから信頼できると錯覚してきたという現実を示している。また、自然科学的方法論に基づいた学問体系としての『医学』と、その社会的適応である『医療』における臨床研究の方法は異なってくると考えられるが、そのことについての議論はあまりなされていない。さらに近代西洋医学の研究手法である従来の線形科学中心の自然科学が、実は唯一絶対的な評価基準ではないという視点も重要であり、臨床研究を進めていく際に留意しておくことが大切である。

 患者中心医療やNarrative Based Medicine(NBM)に代表されるように、医療そのものの意味合いが見直されるようになってきた近年においては、治療効果のみをEBMの対象とするのではなく、患者の「満足度」といった極めて個別性の高い主観的な要因も評価指標となってくる。EBMの定義は、「入手可能な範囲で最も信頼できる根拠を把握したうえで、個々の患者に特有の臨床状況と患者の価値観を考慮した医療を行うための一連の行動指針」とされている。一般的にはこの定義の前半部分が強調される傾向があるが、臨床研究においては、特に後半部分への配慮が重要となるのであり、そのための新しいパラダイムに基づく方法論自体の研究が望まれる。

 今回の講演では、このような臨床研究の新しい方法論を今後考えていく方向性として、人の健康と病と癒しの意味について、様々な医療モデルを提示しながら述べてみたい。

 

 
 

 

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