平成15年健康指標プロジェクト講演会要旨 |
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第44回例会
(11月15日(土) 14:00〜17:00、京大会館102号室) |
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食と健康,アレルギーをモデルに
−ゲノムサイエンスからみた食物摂取効果の評価展望と可能性− |
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白川 太郎 (京都大学大学院医学研究科健康要因学講座健康増進・行動学分野) (理化学研究所遺伝子多型センター(SRC) アレルギー体質関連遺伝子研究チーム) |
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2001年にヒトゲノム計画により、遺伝暗号のドラフトが発表され、2003年には完全なシークエンスが発表された。日本では、これを受けて、ポストゲノム計画が2000年より進行している。その主たる目的は、全ゲノムにおいて、SNP(1塩基多型)をもとにそのリストを作成し、生活習慣関連病の原因遺伝子を特定することである。それ以前には、家系のサンプルを用いて、マイクロサテライトマーカーを使用した全ゲノムの解析が行なわれていた。この方法は、候補遺伝子座を特定するには極めて強力であはあるが、様々な問題があり、生活習慣病のような多因子疾患の遺伝子解析に十分な力を発揮しているとは言いがたい。実際アレルギーの分野でも少数の遺伝子しか特定されていない。そこで理化学研究所では、全ゲノムに渡り、SNPを特定するとともに、連鎖不平衡が成り立っていると仮定して、その範囲内を目標に候補遺伝子を、患者対照者研究によって特定する計画を立てそれを行なってきた。勿論この方法でも多因子疾患である生活習慣病の遺伝子特定には様々な困難があり、それを十分踏まえた上で解析を行なう必要がある。 本講演では、まずこれまでの全ゲノムでの連鎖解析を概説し、あわせて理研での解析を紹介することとしたい。特に、粘膜免疫との関連で、自然免疫に関連した遺伝子がアレルギー疾患とどのように関連しているかについて現在までのデータをお示ししたい。 アレルギーは多因子疾患であり、遺伝子と環境要因の相互作用によって発症する。最近の疫学調査では、初期の消化管での細菌叢の形成がアレルギー予防に重要であることがわかっている。しかし、消化管内の細菌がどのような役割をしているかについての詳しい機序は未だに不明である。今後遺伝子解析と機能性食品との相互作用についての研究がなされるべきと考える。 本講演を通じて、アレルギー疾患における遺伝子解析がどのように進行しているのか、それによってNeutrigenomicsと、どのような接点が生じるのか、について皆様のご理解が深まることを希望しております。
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