2003.10.3
 

 平成15年健康指標プロジェクト講演会要旨

第43回例会
(10月18日(土) 14:00〜17:00、京大会館102号室)
光受容体の多様性と分子進化

七田 好則
(京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻 生物物理学教室)
 


 自然界にはさまざまな動物が住んでおり、地球の数十億年の歴史を通じて、単純なものから複雑なものへと進化してきた。一方、動物が光を感じるという機能も、ただ単に光を感じるだけから色を識別したり感度が高くなったりと、長い歴史の中でより精巧になっている。私たちは、この機能の発達が、動物進化のどの時期に、またどのようにして起こったのかに興味をもって研究を続けている。さらに、その機能の分子メカニズムにも興味をもって研究を続けている。

 動物が光を感じるためには、目の中に光に感じる物質がなければならない。この物質が視物質と呼ばれるタンパク質である。視物質は光受容のために特別に作られたタンパク質(光受容体)で、光を感じる能力のあるすべての動物が持っている。つまり、動物の光受容の進化を調べるのに最も適したタンパク質の一つである。

 アミノ酸配列の違いをもとに視物質の分子系統樹を作ると、先祖型の視物質は、進化の過程で色を見る4つの視物質のグループにわかれ、その後、緑を感じる視物質のグループから薄暗がりで働く視物質ロドプシンが分岐してきたことがわかる。キンギョやニワトリは色を見る4つのグループに属する視物質をそれぞれ1つずつ持っているが、ヒトは2つのグループに属する視物質しか持っておらず、赤と緑は同じグループに属している。つまり、ヒトの進化の過程で、色を見
る2つの視物質遺伝子が失われ、その後に1つの遺伝子の重複が起こったことがわかる。

 講演では、視物質の分子進化・多様性から実現した種々の機能発現について、我々の研究結果を中心に概説する。

 

 
 

 

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