2003.2.6
 

 平成15年健康指標プロジェクト講演会要旨

第38回(2月15日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
ケモカインによる血球形成,器官形成の制御

長澤 丘司
(京都大学再生医科学研究所)
 


 造血細胞に代表されるように、生体の幹細胞や前駆細胞は器官形成過程で臓器間臓器内でダイナッミックに移動することが知られている。しかしながらその制御の分子機構は、一部の接着分子の関与の他ほとんど明らかでなかった。ケモカインは細胞遊走誘導活性が強く、膜7回貫通G蛋白質結合型受容体を用いるユニークなサイトカインのファミリーで、かつては炎症性メディエイターとのみ考えられていた。私たちは、ケモカインファミリーの一つSDF-1/PBSFをBリンパ球の前駆細胞の増殖を促進する分子として同定し、SDF-1/PBSFの生理的受容体がエイズウイルスの宿主側受容体であるCXCR4であることを明らかにした。更に、これらの分子が、Bリンパ球の生成、心室中隔の形成、胃腸管に分布する大型の血管の形成に加えて、発生過程における胎児肝から骨髄への造血細胞の移動、定着に必須であることを見い出した。また、ごく最近、SDF-1/PBSF, CXCR4が生殖細胞の幹細胞である始原生殖細胞の発生過程における移動に重要であることが見い出された。これら一連の研究により、SDF-1/PBSFは、造血にとどまらず、発生過程における幹細胞、前駆細胞の動態制御の鍵となるサイトカインの一つであることが明らかになってきた。本日は器官形成の制御におけるSDF-1/PBSF、CXCR4の作用の本態の解明に向けての私たちの一連の研究を紹介させていただきたい。

 

 
 

 

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