2001.12.4
 

 平成13年健康指標プロジェクト講演会要旨

第27回(12月15日(土) 14:00〜17:00、京大会館)
ヒト組織工学の臨床応用を目指して
-指の再生:骨・軟骨・腱の再生技術-

磯貝 典孝
(近畿大学医学部形成外科)
 


 
 指の構造において、指骨・指関節は機能上の中心となる支持組織であり、骨、軟骨、腱組織などの複合組織から構成されている。上肢機能の大部分が、指を有効に働かせるためにある最終的効果器であるため、その再建手術においては、正常指がもっている形態的、機能的特徴をどの程度備えたものが形成されたかによって手術成績が左右される。

 従来の断端形成術では、指が短くなるという形態的変形のみにとどまらず、しばしば、手の機能障害を残す。一方、機能温存を目的とする人工骨や人工関節置換術では、骨吸収によるゆるみ、金属疲労による破損、骨頭部の摩耗など改善すべき点も多く指摘されている。また、耐久性が保証されていないため、現状では、その適用は高齢者に限られている。

 このような状況において、手指欠損の再建治療では、足趾を顕微鏡下に血管吻合を行って手部に移植する術式(toe-to-finger transfer)が、現在、最も一般的に行われている。しかし、この方法では、足指を失うという点に問題があり、小児や女性への手術適応は極めて制限されている。

 この問題を解決し得る治療法の1つとして、近年、組織の再構築に関わる再生工学、tissue engineering が注目されてきている。 この tissue engineering では、(1)特定の組織を作り出す細胞、(2)その細胞の足場となる基質、(3)細胞増殖や分化をコントロールするサイトカイン、(4)組織生着を左右する血行の4つの要素を組み合わせて組織再生を促している。これまでの研究において我々は、指を構成する骨、軟骨、腱のそれぞれの細胞を生分解性ポリマーに組み込み、これらを組み合わせて移植する事により、指骨・指関節が形成できることを示した。そこで本発表では、指骨格の再生に必要な骨・軟骨の再生技術を紹介し、組織新生における播種細胞の役割について解説する。

 

 
 

 


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