1999.9.24
 

 平成11年健康指標プロジェクト講演会要旨

第7回 (10月16日、14時〜17時、京大会館102)
酸化ストレス指標としてのバイオマーカー
豊国 伸哉
(京大 医・病理)
 
 

 酸化ストレスとは、活性酸素・フリーラジカルによる「負荷」から抗酸化剤 あるいは抗酸化酵素などによる「防御・消去・修復能」を減じたものと定義すること ができる。そして、近年、発がん、動脈硬化、糖尿病、紫外線による皮膚傷害、虚血・再潅流傷害を初めとするヒトのさまざまな病態に関与していることが判明しつつあ る。

 わたしたちは、1982年に鉄キレート剤である鉄ニトリロ三酢酸 (Fe-NTA) の反復腹腔内投与がラット・マウスにおいて高率に腎細胞癌をひきおこすことを見いだし、それ以来20年近くに渡る研究により、このモデルにおいては鉄を介した酸化ストレスによる組織傷害が根幹となっていることを示してきた。このモデルから派生した研究としてセミナーでは、1)種々の病態に酸化ストレスが関与しているか、2)上記酸化ストレスによる発癌において標的となる遺伝子は存在するか の2点についてお話したい。

 酸化ストレスのマーカー分子としては、大きく分けて修飾をうけた分子、代謝・修 復酵素群、転写因子の3種類が考えられる。私たちは8-oxoguanine などのDNA修飾塩基、4-hydroxy-2-nonenal などのアルデヒド類、そのアルデヒドが細胞内蛋白質と反応した複合体産物などcovalentに修飾をうけた分子種の増加を報告し、その分子に対する抗体の作製や応用を推進してきた。この2つの分子の動きを、Fe-NTA 腎癌モデル、肺癌治療、糖尿病病態、大腸癌病態などで追跡したものを紹介する。

 活性酸素・フリーラジカルは免疫機構と異なり反応する相手を選ばないため、遺伝子がランダムに傷害を受けるのか、また特定の遺伝子が傷害を受けるのかが大きな命題であった。最近、遺伝学的な手法より Fe-NTA 誘発腎癌の主な標的遺伝子のひとつを明らかにしたのでこれもあわせて紹介する。

 

 
 

 

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