1999.8.12
 

 平成11年健康指標プロジェクト講演会要旨

第6回 (9月18日、14時〜17時、京大会館102)
中枢神経系の可塑性維持における補体の役割
岡田秀親
(名古屋市立大学医学部分子医学研究所)
 
 

補体は抗原に反応した抗原により活性化されて、細胞膜の溶解や、炎症反応の誘導などの生物活性を発揮する血清中の因子群として知られていた。ところが、第二経路(Alternative Complement Pathway: ACP)の発見により、抗体の介在なしにも異物を識別して反応することが明らかになった。ACPでは、補体系自身に自動活性化システムを備えており、補体反応の始動が常時起こっているが、反応は異物に対してのみ起こることから、異物識別の手段としては、自己細胞には種特異的補体制御膜因子が存在し、補体反応を防ぐが、異物には無制限に反応するために異物にのみ補体反応が起こる仕掛けになっているこという作業仮説を立てて検討した結果、その通りであることを立証することが出来た。自己の補体反応を種特異的に抑制する膜分子としては、DAF及びMCPが米国のグループによって同定され、我々もHRF20 (CD59) を同定した。DAFやMCPは補体反応の拡大活性化を抑制するが、HRF20は細胞膜を破壊する段階を抑制する。

中枢神経系でのDAFやHRF20の発現を免疫組織化学法で調べてみたところ、他の組織と異なり、DAFやMCPの発現は殆どなく、HRF20のみの発現が認められた。このことから、中枢神経系では補体反応の活性化はむしろ必要な現象で、膜障害のみ抑制しているのかもしれないと考えてみた。補体の自動活性化により、常にC3aやC5a等の活性 化フラグメントが形成され、これが神経系を刺激して、神経系の活動を継続させていると作業仮説である。調べてみると海馬の大型の神経細胞にはC5a receptor (C5aR) の発現が認められ、C5aRを介して神経細胞が刺激を受け、神経回路の可塑性維持に役 割 を果たしているのではないかとの夢を想いめぐらしていることについてお話させていただきます。

 

 
 

 

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