1999.8.30 revised
 

 平成11年健康指標プロジェクト講演会要旨

第6回 (9月18日、14時〜17時、京大会館102)
意外な起源の生理活性ペプチド
吉川正明
(京都大学食糧科学研究所)
 
 

 生理活性ペプチドの前駆体とは見なされていなかったタンパク質から酵素消化によって生理活性ペプチドが派生することが見出されたのはカゼイン由来のオピオイドペプチドβ-casomorphinが最初の例である。その後、乳タンパク、血液タンパク質など多くの動物性タンパク質からオピオイドペプチド、血圧降下ペプチド等多くの生理活性ペプチドが派生する例が見出され、さらに意外なことに、動物に対して作用を示す生理活性ペプチドは植物タンパク質からも派生することもわかったのである。動物にとって好ましい作用を示すペプチドが植物の種子タンパク質から派生する事実は、 生理活性物質は合目的性をもって創られるという考えと矛盾するように思われる。この10年来、化学合成やランダムDNAを鋳型として構築されたペプチドのランダムライブラリーから多くの生理活性ペプチドが見出され、生理活性はある確率のもとに偶然存在し得ることがわかった。これらの事実をもとに、我々は食品タンパク質等から派生するペプチドの多くはいわば偶然存在するものと現在では考えている。これまでに判明した範囲ではこのようなペプチドはすべて内因性生理活性ペプチドと共通のレセプターを介して作用するが、多くの場合内因性ペプチドとのホモロジーは3残基程度にすぎない。そして、多くの場合それらの比活性は内因性ペプチドの1/1,000程度である。しかしながらそれらの中には分子サイズが小さく、且つペプチダーゼ抵抗性を有するなどの理由から経口投与でも血圧降下および神経作用等を示すものが十分あり得るのである。このことは内因性生理活性ペプチドは殆どすべてが経口投与では無効であることと著しい対照をなしている。また上記の研究過程で抗健忘作用や抗脱毛作用等興味深い活性を示すペプチドを見出した。このようなペプチドを生活習慣病予防の目的や新しい医薬品開発のためのリード物質として利用することが期待される。

 

 
 

 

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