平成11年健康指標プロジェクト講演会要旨

第5回 (6月26日、14時〜17時、京大会館212)
骨髄細胞の底力
中内啓光
(筑波大学基礎医学系・免疫学)
 
 

血液中には赤血球・白血球・血小板等、いろいろな種類の血液細胞が存在するが、寿命が数日から数ヶ月と限られているため、常に新しく供給される必要がある。新しい血液細胞の供給に中心的な役割を果たすのが骨髄中に存在する造血幹細胞とよばれる細胞である。造血幹細胞は「多能性」と「自己複製能」の両方の性質を兼ね備えていて、種々のフィードバック機構のもとに分化と自己複製を繰り返し、一生にわたり全ての血球細胞を供給し続けることができると考えられている。したがって、造血幹細胞は「細胞の分化と自己複製の機構」という生物学的な問題を解明するための格好のモデルである。また、造血幹細胞の分化と自己複製を生体外で制御する技術が確立されれば一個の造血幹細胞から血液系という臓器を再生することが可能になり、ドナー不足、拒絶反応など、骨髄移植が現在抱えている多くの問題が解決されると考えられ、医学的見地からも極めて重要な知見を提供する。そこで我々は骨髄造血機能の本質であり、骨髄移植後の血液系再構築の鍵を握る造血幹細胞を純粋に取り出し、その性質を明らかにする研究に取り組んできた。本講演では分離同定された造血幹細胞の性質と、骨髄移植や遺伝子治療の標的細胞としての高いポテンシャルについて概説したい。

 

 
 

 

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