4. どの位効くか。



 患者さんやそのご家族から、今こうゆう病状ですがそれでもハイパーサーミアは効くでしょうか、というご質問がきます。そのときに私が考え込んでしまうのは「効く」と言う言葉の意味です。医師であればそれは腫瘍縮小率や延命効果でみた有効率が可也高いと言った客観的な評価を意味する、と考えられるでしょう。しかし、一般の方は「効く」と言えば、それで病気が治ってしまう、と考えられるのではないかと心配するのです。がんは難しい病気です。ある程度進行したがんに対してハイパーサーミアも決して万能ではありません。上手にやれば、狙った腫瘍を縮小させたり、痛みを取ったりして生活の質を向上させることができます。幸いにして大きな転移が苦痛の種であったのが、それが消失することで、再発もなく延命しているという例もありますが、進行がんでは常にそのようなことを期待する事は出来ません。

 もう一つは担当医に関して問題です。メイルでの質問に、担当の先生にハイパーサーミアのことを尋ねたところ、「あれは局所療法だからこのように転移が広がっているときは適応ではありません」と言われましたがどうでしょうか、というのがあります。確かに局所療法には違いないのですが、手術や放射線と違うのは点在する細かい転移巣を全体として加温することで治療が可能であるいう点です。しかも日を変えて順番にいろんな部位を次々と治療することで可也拡がっている場合にも対応できます。肺野全体に広がっている転移に対して左右の肺野を交互に治療して好成績を収められた例もあります。化学療法をされるのならば、温熱の併用で局所的に制癌剤の効果を高めることが期待できるのですから、是非温熱の併用を考えてみてください。これは私からの担当医へのお願いです。

 具体的な治療については、松田忠義、菅原努、阿部光幸、田中敬正 編集:「難治癌への挑戦:ハイパーサーミアの臨床(医療科学社 1999)をご参照ください。私もこれを座右に置いて、その上で学会などで聞いたことも参考にしながら、メイルの質問に答えるようにしています。なお、担当医にお願いしたい事はこれらの教科書にないからと言ってすぐに適応外にしないで、上に縷縷述べました作用機構を考慮して新しい可能性に挑戦して頂きたいということです。その一つとして肺がんへの治療の成功例があります。また温熱単独で乳がんに著効を示した例も聞いています。患者さんのために積極的な姿勢をお願いします。幸い保健適用については何の制約もありません。

 

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