2007.10.1 |
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菅 原 努 |
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53. 秋を待つ | ||||
真夏の暑い盛りには、冷房の効いた老人ホームのわが部屋は快適でした。しかし、9 月になって一日すがすがしい朝があって、久しぶりに深泥が池をめぐって地下鉄の駅まで歩くと、照りつける朝日も心地よく、やはり秋だなーと喜んだのでした。ところが残念ながらそれはただの一日で、また元の暑さがぶりかえし、今お彼岸のさなかというのに、冷房なしでは居れません。耳の遠い我が身のことですから、わざわざ補聴器をつけて虫の声でも聞きたいと窓ガラスを開けるのですが、すぐに部屋がむっとして、虫の声をあきらめてまた窓を閉じてしまいました。 暑さだけではなく、ここのところ日本の社会まで混乱し何となく蒸し暑い感じではないでしょうか。私も「環境と健康」(20 巻 4 号 2007 年 12 月発行予定)のサロン談義で「医療崩壊」を取り上げました。そこへ安倍首相の突然の辞任です。その安倍首相(当時)は国際社会に対して 2050 年までの CO2 削減目標を勇ましく掲げたあげくの退任でした。最近私はたまたま環境関係の学会を覗く機会がありました。さすがに問題が問題だけに、いろんな分野の人が発表していて大変興味を持って聞きました。しかし、問題の提起に対してそれへの対応が大変ずさんなことが気になりました。勿論これは私がたまたま聞いた発表に限ったことかも知れませんが。私はこれらの最近の日本の社会の状況を見ていて感じるのは、これらは小泉元首相が口癖のように言っていた「改革なくして前進なし」の無責任さです。物事を計画するときには、必要条件とともに、それが十分条件かということを吟味せねばなりません。小泉さんの発言はこのうちの必要条件には違いがありません。日本の政治の現状を政治家は、「小泉改革の影の部分」と言っていますが、影が出来ることは初めから分かっていたはずです。したがって日本を前進させるための十分条件を検討するなかで、当然浮かび上がって来るべき課題だったはずです。 私はこのことについて、小泉さんは知っていてうそをついていた、と言うのですが、ある知人は、そうではなく彼も十分条件などということは知らないのだと言うのです。その知人もそんなことは初めて聞いた、と言います。でもこれでは困ります。多分医師の研修制度の改革も同じように必要条件しか考えなかった、役人の失敗でしょう。また医療費が増えているのも、高齢者が増えて寿命も長くなったことが大きいと思いますが、医療費削減の計画のなかで、その自然増はどのように取り扱われたのでしょうか。がん死亡率も全体として増えていますが、年齢調整死亡率で見れば僅かづつでも年々低下しているのです。これのさらなる低下こそ国としての目標でなければなりません。これも私の持論ですが、役人は自分の主張に都合のいい分子だけを取り上げて問題にし、分母のことを無視しているのではないでしょうか。 いや、暑さが続くせいか、話がだんだんと拡散して来ました。早く涼しくなってみんなで冷静に我々の社会の将来を考えたいものです。何を言っているのか、墓場に片足を突っ込んだ老人がと言われそうですが。
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