2006.9.1 |
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菅 原 努 |
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40. 上と下に挟まれて | ||||
このところ私が長年続けてきたいろんな仕事について、次の世代によって、と言ってもやはり大学を定年退官した名誉教授であることには変わりはないのですが、新しい展開が試みられています。それは雑誌「環境と健康」の新しい編集方針であり、「いのちの科学を語る」シリーズの出版などです。そこで私もこのホームページを情報技術の進歩に合わせて何か新しい展開が出来ないか、夏休みの宿題として何冊か本を買ってきて勉強してみました。その中で一番感銘を受けてなるほどと思ったのが梅田望夫著「ウエブ進化論:本当の大変化はこれから始まる(ちくま新書)」でした。以下に私が成程と感心した項目を拾ってみます。 Googleグーグルの検索システムの話から始まります。普通インターネットでは自分のパソコンの性能を如何に高め活用するかが論じられます。著者はこれをインターネットのこちら側と呼んでいます。グーグルは単なる検索システムではなく、その内部でいろんな作業をコンピューターを使ってやりそれをユーザーに還元している、それを著者はインターネットのあちら側と呼んでいます。例えば「アドセンス」という事業は「無数のウエッブサイトの内容を自動識別し、それぞれの内容にマッチした広告を自動掲載する登録制無料サービス」です。これをうまく活用すると小遣い程度は稼げるそうです。もう一つグーグルが成功したのが本の内容をインターネットでの公開です。本の内容など公開したらその本が売れなくなるではないか、というのが一般の受け取り方です。でもグーグルはロングテールに注目したのです。このロングテールというのは、本販売部数を縦軸に、多い方から順番に並べていくと、ベストセラーでは高い山になりますが、その後に少ししか売れない本は延々と続くでしょう。この長いお尻尾にあたる部分のことをいうのだそうです。グーグルによると本の内容を公開することで、今まで売れなかった本が売れるようになり、ロングテールの売り上げが全体の3分の1にまで増えたというのです。 このような斬新な情報に惹かれてこの本を読み進んだのですが、最後の「脱エスタブリッシュメントへの旅立ち」という終章に来て「うーん」とうなりました。著者は34歳のときに、社内ベンチャーとしてスタートしたシリコンバレー事務所の責任者として、勤めていた外資系コンサルチング会社の米国本社に転籍したのだそうです。それから沢山の思わぬ苦労を沢山重ねてきたのです、「44歳の私(著者)」が「日本人一万人・シリコンバレー移住計画」という非営利プロジェクトを2002年に立ち上げ、若者に嵐の中へ飛び込めと呼びかけている、というのです。私も26歳で母校を飛び出して40歳で帰ってくるまで次々と新しいところでいろんなことを経験しましたから、著者の言うことはよく分りますが、この44歳と私の85歳とを比べて「あーわれ老いたり」と痛感しました。 その老人である私は、昨年から有料老人ホーム「京都ヴィラ」にお世話になっています。ここは平均年齢82.4歳の老人94名(平成18年6月30日現在)がお世話になっています。そこで8月8日の夕食に何時ものように食堂に行くと、食事に紅白の饅頭の入った箱が添えられており、苑長さんからO氏の100歳の誕生日であるという紹介があり、皆でお祝いをしました。実は毎日6、70人が一緒に食堂で一緒に夕食を頂くのですが、見渡したところ誰も晩酌をしている方は居られないのですが、ただ独り毎晩一合瓶を片手にちびりちびと晩酌を楽しんでおられる老人が目に付いていました。その元気な老人が実は100歳になられたと聞いて驚いたのです。私は沢山の持病がありとてもそこまで生きられるとは思いませんが、それにしてもO氏の歳までは未だ15年もあると思うと、「あーわれ老いたり」などとは言っておれないと感じるのでした。苑長さんのお話ではもう一人女性で100歳の方が居られるそうです。自分ではもうこれで天寿を全うしたことにするか、と思っていたのですが、こんなに高齢でお元気な方を見ていると、初めに述べた43歳の人の話と考え合わせて、自分自身は上と下の両方から挟まれて、どちらにも付けずうろうろとしている、一体どうしたものか、と言うのが今の迷える心境です。
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