2005.10.1
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菅 原 努
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29. 「もったいない」を生かそう | ||||
「もったいない」とは、物の本体を意味する「勿体=物体」のこと。「ない(無い)」は、それを否定したもので、本来は、物の本体を失うことを指す言葉でした。また。「もったいない」には重々しく尊大なさまと言う意味もあり、それを「無し」にすることから、畏れ多い、かたじけない、むやみに費やすのが惜しいという意味で使われるようになりました。 しかし、なによりも「もったいない」という言葉の奥には「努力」や「苦労」、「時間」や「歴史」など、せっかく積み重ねてきたことを「失ってしまう」「「無にしてしまう」ことへの無念と哀しみがあるのです。(以下略) このような解説の後に最初に出てくるのは私も上に書いたご飯の話です。 食事を残すのは、とてもお行儀のわるいこと。 私は先日、日本のある医学会の大会懇親会で挨拶を頼まれたときに、この話を次のように紹介したのです。 “マータイさんは、日本に来て3Rを一言で表わす便利な言葉として「もったいない」を見つけ、それを世界に広めようとしていると、報じられています。私は彼女の本を読んで、彼女は一言で表わす便利さ以上にもっと精神的なものをこの言葉の中に読み取ったのに違いないと思います。皆さんは今日の学会で物理、生物から医学臨床にまでわたる広い医学の問題を突っ込んで科学的な議論をしてきました。でも私には何か未だ足りないものがあるように思えます。医学は最後には患者さん個々のこころの問題を無視しては語れません。丁度マータイさんが日本に来て何か物質を超えるものを感じたように、私たちは医学の研究においても、本来持っているこの大切なものを忘れないようにしたいものです。ことに懇親会では、是非科学的な問題を超えたこころのことも話し合って頂きたいと思います。そうすればこの懇親会が一層実りあるものになるでしょう。” 西洋的な3Rから「もったいない」へ、という言葉の違いの中に何があり、何が大切か、日本人の心の中で消えかけていたこの大切なものをもう一度しっかりとこころに留めたいものです。先日も新聞の一面を全部使って 人と地球が健康であるために、 という意見広告2)が出ていました。大いに我が意を得たと喜んでいます。この機会に、私からも日本人の心に生きる「もたいない」の精神をもう一度よく思い出し、それを生かすことを、訴えていきたいと思っています。
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