今日来た「京大学生新聞」(2005年5月5日号)の第一面に96歳で水泳のマスターズ世界記録保持者の山元 則という方の記事が載っていました。このように元気な高齢者の話を聞くのは元気付けられ、嬉しいものです。私も数年前に誘われて当時90歳の日野原重明さんの主催される「新老人の会」はいりました。先日も日野原先生は元気で講演をおえて演壇から階段を通らずにパット飛び降りられたので、聴衆一同びっくりして拍手喝采でした、という話を聞きました。「新老人の会」から毎月送られてくるニュースなどには目を通していますが、会合には出たことがありません。何となくなじめないものを感じるのです。
私も運動はせねばと思い、家から地下鉄の駅まで、前には20分も掛らなかったところをステッキを突きながら30分ほどかけてとぼとぼと歩いています。でもそうしてオフィスに出かけ、仕事の計画を練ったり原稿を書いたり何とか人並みの仕事は出来ています。要するに頭の方はまだ確かだが、肉体はかなり衰えているということです。
この矛盾はどうしたことでしょうか。私はこれこそが高齢者の特徴だと思うのです。それは、歳をとるほど個人差、一人の中では機能別の差が大きくなるということです。大抵の人は日野原先生の真似をして段から飛び降りたら途端に転んで足の骨を折るでしょう。歳をとって急に水泳を始めても無理です。それでも何か出来る事があるでしょう。大事なことは、余り人のことは気にしないで自分に出来る事を一生懸命にやることです。何をしたら良いか迷っている時には、集まりに出ていろんな意見を聞くのも良いでしょうが、人の意見に振り回されるのは問題です。
これは私が年寄りと言う者は勝手なものだと言われないための前置きです。数年前から私は歳をとって体力も落ちてきたのでと言って、次々と役職を辞任させて頂きました。ところが突然去年の後半から、新しくNPO法人を作ろうと皆さんに働きかけだしました。それがようやくこの5月2日に登記され正式に発足することになったのです。それは私としても嬉しい事であり、皆さんのご協力に感謝申し上げねばならないのですが、内心忸怩たるものがあります。それは辞めると言ったり、又今度は新しいことを始めると言ったり一体何が本当なのか、という詰問です。今世の中には大切な大きな問題が沢山あります。今国会では郵政民有化問題で持ちきりです。そんなことより国民にとっては年金不安の方が大切だという意見もあり、憲法改定も大問題です。JR西日本の事故も眼を放せません。隣の中国や韓国との関係はどうするのか、ということもあります。それに何故突然「さきがけ技術振興」なのだ、しかも84歳の老人が旗を振って、と言われることでしょう。
大変勝手かもしれません。しかし、これが老人なのです。消えかけた蝋燭にぱっと最後の火がついたのです。国の権威者たちが折角わが国で開発された優れた技術を認めようとしないで、欧米の方ばかり向いているのに腹を立てているのです。これを何とかする事が出来ればと考えたのがこのNPO法人です。先日もNHKスペシャルで「日本のがん医療を問う」というのがありました。そこでは患者さんの声として「外国で承認されている新薬がどうして我が国では使えないのか」というのがありました。これは一見尤もですが、これらの新薬の名声は巨大な国際製薬企業のよって作られたものであることを考えたことがあるのでしょうか。それを日本の学会まで後押しして世界にさきがけて認可したが、死亡例まで出したイレッサのことを覚えていますか。私は私達が開発したがん温熱療法(ハイパーサーミア)のことを思い浮かべながら、複雑な気持で見ていました。
私としては、残されたエネルギーをつぎ込んでこのNPO法人を何とか立派な形に育てて後に譲りたい、と思って一生懸命がんばるつもりです。どうかこの心情を理解してご支援くださいますようお願いします。私の周りには優秀な人たちが居て、一緒に頑張ってくれます。どうかよろしく。
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