2004.11.1
 
八十路のつぶやき
 
菅 原  努
  18. 難聴の難しさ
 


 私の入っている「新老人の会」から毎月送られてくるパンフレットのなかに教育医療というのがあります。その10月号のメミナー報告の欄は「難聴のメカニズムと対応」でした。日ごろ難聴に悩んでいる私は早速読んでみました。そのなかに補聴器についての質疑応答がありましたが、残念ながらその内容が自身難聴をもつ私からみると全く的外れでした。音を聞き分けるというのは、非常に複雑なメカニズムのようで耳鼻科の先生にも十分理解されていないことがよく分かりました。具体的には次の質疑応答です。

<質問7> 最近はデジタル補聴器も普及しているようですが、この使い勝手はどうでしょうか。またどの段階で使うのがよいでしょうか。

<答え> 私は25デシベルを超える人では、状況によってはおすすめします。この程度の人なら、相手の顔を見て一対一の会話で口を見ながらという状況においては、ほとんど補聴器を使わなくても問題がないと思います。しかし騒音環境や多人数との会話など、条件の悪い場合には補聴器が必要な場合があり、さらにジギタルは値段が高いのですが有効だと思います。お困りになる状況によっては、使われる方が生活の質を上げるという意味では有効かと思います。(以下略)

 さて、これからが私の意見ですが、先ずこの答えでは本末転倒していると思います。補聴器について質問をする人は、普通に話をしていてよく聞き取れないからで、何デシベルといった値が先にあるわけではないのです。今の医学が先ずデータという偏りがここにも出ています。次に騒音環境や多人数との会話には今の補聴器は役に立たないというのが私の実感です。健康な耳では騒音があっても、多人数が話していても、誰かの話に注意を集中して聞くことが出来ます。ところが補聴器をつけると耳に入ってくる音を全部増幅するものですから、騒音は一層やかましくなり、大勢の声が一度にわっと入ってきて何がなんだか分からなくなります。耳が遠くなったら例え補聴器をつけていても、ある方向からの声だけを聞くように、耳のうしろに手をかざしてその方向を向くというのが唯一の今での方法です。拡声器のある部屋では、それが一方向からだけなら幸いで、その方向に手をかざせばよいのですが、スピーカーが複数あるとそれも難しくなり、私はもう話を聞くのを諦めます。今の補聴器というのはそれ程不完全なものです。

 そこでジギタルですが、これで周波数別に増幅を調節できます。従って検査成績の曲線は如何にもよくなります。私などは高音部の聴力が大きく落ちているので、それを増幅して聴力曲線は見事に正常に戻ります。ところがそれで何でもよく聞こえるかというとそうではありません。私はクラシック音楽が好きだったので、オーケストラを聴きますがバイオリンやフル−トはよく聞こえますが、コントラバスなどの低音は全く聞こえません。これについての私の解釈は、今の聴力検査は人の話の周波数の範囲だけを問題にしているので、音楽の音域をカバーできていないのではないか、ということです。多分そこまで聞こえると会話には邪魔になるかも知れません。そこで、会話用と音楽会用と言った機能別の補聴器が必要になるでしょう。残念ながら耳の専門家に音楽好きがいないのでしょうか、それとも自分で経験しないから分からないのでしょうか、そのような物が作られたという話は未だ聞きません。もう一つは、前にも書きましたが、目的に合わせて聞き方を訓練することが必要だということです。これは補聴器を使う上でのことですので、補聴器を売る以上、そのような訓練の場を設けるといって工夫が欲しいものです。

 耳の後ろに手をかざすというのは、本当に役に立つのですが10分もすれば手がくたびれてしまいます。そこで友人のビニール屋さんに、手に代わるものを作ってくれるように頼みました。もし出来てきたらまたこの欄を通じて試験結果をお知らせしましょう。楽しみにして待ってください。

 

 
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