2006.6.1

             
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リスクと生活

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自動車交通事故のリスク50年(15)
《 年間12ヶ月の死傷数と事故件数の推移(3) 》

主任研究員 武田篤彦


1. 基礎データ

  交通事故統計年報(総務省警察庁、(財)交通事故統計センター、1965年〜2004年、月別交通事故発生状況の推移=事故発生件数、死者数、負傷者数、(掲載は不定期)) 人口統計(総務省統計局、2005年)

2. データの検討

 今回も前回同様に、基礎データに示された45年の各暦年における各月の事故発生件数、死者数、負傷者数について、各月の人口10万あたりの数値を求めました。そして、これを5暦年ごとに分割して9グループ((1)〜(9))に編成しました。また、この各グループの年間(12ヶ月)平均値を計算し、それを基準として各月の数値との差異を求め、比較しました。

2-1. 人口10万あたりの事故発生件数、死者数、負傷者数の月別推移(図1、図2、図3)

 事故発生のグラフ(図1)では、9本相互の類似点に注目してこれを区分し、1月と年末のあいだの増加傾向について、概略を観察しました。第1の区分:グループ(1)、(2)、(3)、(7)、(8)で、増加は約20%、第2の区分:グループ(4)、(5)で、増加は約20%、第3の区分:グループ(6)で、増加は約20%、第4の区分:グループ(9)で、増加は約30%でした。

 同様に、死者のグラフ(図2)9本の区分では、第1の区分:グループ(1)、(2)、(3)で、増加は50%、第2の区分:グループ(4)、(5)、(6)、(7)、(8)で、増加は約30%、第3の区分:グループ(9)で、増加は約20%でした。

 さらに負傷者の9本のグラフ区分(図3)では、第1の区分:グループ(1)で、増加は約50%、第2の区分:グループ(2)、(4)、(5)、(6)、(7)で、増加は約50%、第3の区分:グループ(3)、(8)で、約10%の増加、第4の区分:グループ(9)、約20%の増加でした。

 注目されるのは、グループ(9)の各月の数値です。事故発生件数は、各月ともに過去最大ですが、それに伴うと考えられる死者数は過去最小となっています。そして同時に、負傷者数は最大となっているのです。その原因ですが、自動車台数の増加、車両構造の変化、交通行政の改変など、多くの要因が複雑に関与しているものとおもわれます。

2-2. 年間平均値と比較した人口10万あたりの死者数、負傷者数、事故発生件数の月別変動状況(表1、表2、表3)

 9グループ(45暦年)の年間12ヶ月にわたる3種類の数値について、各月の大小を相互比較しました。比較の項目は、最大、最小、平均値以上、平均値以下の4種類です。事故発生件数(表1):〔最大〕;12月→8月→10月→12月、〔最小〕:2月、〔平均値以上〕:7月、8月、10月、11月、12月、〔平均値以下〕:1月、2月、3月、4月。死者数(表2):〔最大〕:12月→8月→10月→12月、〔最小〕;2月、〔平均値以上〕:7月、8月、10月、11月、12月、〔平均値以下〕:1月、2月、3月、4月。負傷者数(表3):〔最大〕;8月→7月→12月、〔最小〕;2月、〔平均値以上〕;7月、8月、10月、11月、12月、〔平均値以下〕;1月、2月、3月、4月。

 なお、5月、6月、9月の3ヶ月は、平均値をめぐる移行期とみられます。

 各グループの各月事故発生件数の動向を死者数と負傷者数のそれと較べると、〔最大〕の経年移行傾向、〔最小〕の2月固定、〔平均値以上(+)〕の7月〜12月と〔平均値以下(−)〕の1月〜4月には共通点が多く斉一性が見られ、これらが密接に関連していることを推量させます。なお、最近の10年をみると、7月の死者数、5月、6月、9月の負傷者数には減少がみられます。

表1 事故発生件数
 (+;平均値より大、-;平均値より小、オレンジ:最大値、ブルー:最小値)
   人口10万人あたりの発生件数 グループごと平均ヘイキン
区分/月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 平均ヘイキン
(1) 1960〜1964

0.4385
(2) 1965〜1969

0.4754
(3) 1970〜1974

0.4900
(4) 1975〜1979

0.3419
(5) 1980〜1984

0.3523
(6) 1985〜1989

0.4089
(7) 1990〜1994

0.4624
(8) 1995〜1999

0.5240
(9) 2000〜2004

0.6172


表2 死者数
(+;平均値より大、-;平均値より小、オレンジ:最大値、ブルー:最小値)

   人口10万人あたりの死者数 グループごと平均ヘイキン
区分/月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 平均ヘイキン
(1) 1960〜1964

0.0108
(2) 1965〜1969

0.0117
(3) 1970〜1974

0.0116
(4) 1975〜1979

0.0068
(5) 1980〜1984

0.0064
(6) 1985〜1989

0.0067
(7) 1990〜1994

0.0074
(8) 1995〜1999

0.0064
(9) 2000〜2004

0.0054


表3 負傷者数
(+;平均値より大、-;平均値より小、オレンジ:最大値、ブルー:最小値)

   人口10万人あたりの負傷者数 グループごと平均
ヘイキン
区分/月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 平均ヘイキン
(1) 1960〜1964

0.2917
(2) 1965〜1969

0.5610
(3) 1970〜1974

0.6557
(4) 1975〜1979

0.4413
(5) 1980〜1984

0.4396
(6) 1985〜1989

0.5023
(7) 1990〜1994

0.5628
(8) 1995〜1999

0.6426
(9) 2000〜2004

0.7681