2006.2.1
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主任研究員 武田篤彦
交通事故統計年報(1996年、2003年、(財)交通事故統計センター)
表「年齢層別・乗車位置別・シートベルト着用有無別死傷者数」 表 ((1)~(6)は%)
2. データの検討 「年齢層別」は、図1の横軸に示してあるように、ほぼ5歳年齢層別からなり、(6>歳)〜(80<歳)まで17年齢層とその合計に区分されています。「乗車位置」は、“自動車運転中”、“前席同乗中”、“後席同乗中・その他”の4位置と“合計”におけるシートベルトの「着用」と「非着用」の実数により、データが構成されています。 これらのデータを解析するにあたっては、各年齢層の単位人口あたりの乗車率が必要ですが、現在のところ、できていません。そこで、これら年齢層について死者と負傷者における「着用」グループと「非着用」グループそれぞれの合計を100%としたときの、「着用」グループと「非着用」グループそれぞれの各年齢層(計17層)の占める割合を、実数にもとづいて比較検討することにしました。 実数は「着用」グループと「非着用」グループの死者が1,337と1,973、同じく負傷者は630,288と81,831で、「着用」グループの割合は40.4%と88.5%です。また、死者数と負傷者数を併せた「着用」グループと「非着用」グループでは、631,625と83,804で、「着用」グループの割合は88.3%でした。 表は、これらの項目について17年齢層別の実数の合計を100%としてその割合を表示したもので、(1);「着用」グループの死者、(2);同負傷者、(3);「非着用」グループの死者、(4);同負傷者、(5);「着用」グループの死傷者(=死者+負傷者)、(6);「非着用」グループの死傷者です。(7)は、(5)/((5)+(6))を表示しています。 まず、図1についてみると、死者のピークは(20〜24)歳〜(25〜29)歳と、(50〜54)歳〜(55〜59)歳にあり、最大は(20〜24)歳の12.6%でした。同様に負傷者のピークは、(20〜24)歳、(25〜29)歳および(30〜34)歳にあり、最大は(25〜29)歳の14.5%でした。 図2について同様に検討すると、死者のピークは(13〜19)歳〜(30〜34)歳と(50〜54)歳の2ヶ所にあり、最大は(20〜24)歳の15.2%でした。同様に負傷者のピークは、(6>)歳から(30〜34)歳にわたり、(13〜15)歳に不可解な低値をかかえて(30〜34)歳に広くおよんでいて、最大は(20〜24)歳の14.1%となっています。 図1と図2からは、死者と負傷者の多い年齢層は「着用」と「非着用」両グループとも類似したパターンを示していることがわかります。「非着用」グループの若年層では負傷者の割合が高くなっていますが、理由は不明です。 つぎに表の(7)についてですが、これは死者、負傷者の別にかかわらず「着用」グループにみられる着用効果を、「着用」と「非着用」両グループにたいする割合で示したものです。0.5以上なら効果がなく、それ以下の場合は有効であることを示していると解釈しています。 各年齢層別のシートベルト着用率は不明ですが、これによれば、(25〜29)歳〜(60〜64)歳で0.5を超えており、(40〜45)歳で最大の0.65を示しています。このことは、この範囲の年齢層では「着用」グループにみられる効果は「非着用」グループを超えるものではないことを示唆しています。このことを単純にいえば、この範囲の「着用」グループの死傷率は「非着用」グループのそれを上まわっているということです。 以上、不十分なデータについて、不完全な検討を加えた結果を記述しました。
図1 「着用」死傷者の全年齢層の実数にたいする各年齢層の比(%) 図2 「非着用」死傷者の全年齢層の実数にたいする各年齢層の比(%)
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