2005.9.1
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主任研究員 武田篤彦
2. データの検討(1) 図1には、高速道路供用開始の1963年から2002年まで40年間の「死亡者数」、「負傷者数」、「死傷者数」および「仮定の死傷者数」を記載しました。7.1km共用当初の1963年、2人だった死亡者数は、5年後(1968年)に48人、翌年(共用延長621.5km)には121人に達しました。その後、1982年は150人前後で推移しますが、1980年代以降は増加に転じ、1991年の418人をピークに1990年代は300人超の値を示しています(表を参照)。 負傷者の経年推移は、山あり谷ありの経過をとっています。まず、上昇は1968年に始まり1970年のピーク(6,068人)を経て、1971年〜1985年は4,300〜4,900人にとどまりました。1990年からは急上昇に転じ(9,363人)て、以後、2002年の12,942人まで直線的な上昇を呈しました。 死傷者数の経年変化については、つぎのような検討をおこないました。前回に触れたように、1963年の共用開始(71.1km)から2002年の合計7,112.8kmまで、40年間の新規共用は“90km/年”でほぼ一定しています。そして、これにかかわる各暦年(40年)の年間死傷者数について、2002年における13,201人の1/40、すなわち“332.5人/年”と仮定して算出(y=320.35x−33.462)することは許されるとおもわれます。 この仮定のグラフと死傷者の実数との経年的接点をみるため、起点を1963年の供用開始、終点を2002年(暫定)の共用実績として、死傷者数との接点をみると、1968年(1,763人)〜?突出部〜1977年(4,847)〜?陥入部〜1989年(9,359)〜?上昇部〜2002年(13,201)となりました。 確たる根拠無しに考えると、?“突出部”は「高速道路」に不慣れなための事故多発と取締まりの反映、?“陥入部”は日常化された規制の強化と規則遵守の増進ならびに「高速道路」そのものの改善効果、などを挙げることができるでしょう。そして、その延長線上に認められる?“上昇部”は、ここの経年推移における死傷者数の増加が道路総延長の増大を反映しているという単純な仮説とは矛盾しないと考えられます。 この仮説に拠れば、今後の高速道路の延長において、それに伴う死傷者数の増加は避けられないようにおもわれます。
表1は、1963年から2002年までの、高速道路および全道路における死者数と負傷者数の実数の経年推移(抜粋)と、各暦年(抜粋)の全道路における死者数と負傷者数にたいする、高速道路の死者数と負傷者数の割合(%)を示しています。 共用後の早期、1965年には死者数は0.18%、負傷者数は0.14%であったものが、1985年に2.01と0.70、1990年に3.32と1.18へ急上昇しました。以後、死者数の割合は3%台を、負傷者数は1.1〜1.2%程度を保持しています。このことは死者数を経年的にみた場合、全道路については1990年以前から10,000人前後で推移しているのにたいし、高速道路のそれは300人程度を示していることから理解できます。 同様に負傷者数の割合の推移(1.1〜1.2%)をみますと、これは1990年代初頭から後の実数が、全道路で80万人から120万人へ、高速道路で約1万人であったものが1万3千人へと、ともに増進した結果を反映していると考えられます。全道路の場合の3%(死亡者数)と1%(負傷者数)にほぼ固定されている高速道路の死傷リスクの経年推移については、評価の分かれるところであります。 表1 高速道路における死者数・負傷者数と対全道路割合の経年推移(抜粋)
【お詫びと訂正】 |
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