2005.2.1

             
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リスクと生活

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火災事故のリスク50年(9)
《火災は、なかなか減りそうにありません》

主任研究員 武田篤彦


1. 基礎データ

  • 出火原因の種別: 「建物」、「林野」、「車両」、「船舶」、「その他」、「計」.(火災年報=総務省消防局、1950年〜2002年)
  • 人口: 1) 1950年〜2000年 日本長期統計要覧(日本統計協会)
        2) 2001年〜2002年 日本の統計(平成15年版=総務省統計局) 

2. データの検討

  • 出火件数と人口の経年推移:
     図のグラフは、約50年間の出火件数と人口を、実数で示したものです。人口と全出火件数は、1950年の8,320万人と19,243件から、2000年に、人口は1.52倍の126,726,000人、全出火件数は3.05倍の62,454件に達しました。出火件数の増加スピードは、人口増の約2倍ということになります。

  • 各火災種別でみた出火件数の経年推移:
     図に示しましたように、各火災種別とも1960年代の前半までは右上がりに増加しますが、「建物」と「船舶」の増加は緩やかです。「林野」については、年間の山火事の発生は気候に左右されることもあって近年は激減していますが、林野の実面積の減少も関与しているかもしれません。「その他」には、わずかな数値の「航空機」を含ませましたが、それ以外の大部分を占める構成内容については詳細は不明です。「車両」は、これまでにも触れましたが、1970年代半ばから急増しています。
  • 1950年を基準にした各火災種別の経年推移:
     図にみられた各火災種別の出火件数について、1950年を基準(1)にした各火災種別の比較を、表1に示しました。前項で述べた「車両」の激増ぶりはさらに顕著で、2000年の17.67は、「建物」の2.04の9倍ちかい割合です。
  • 全火災の出火件数を100%にしたときの各出火件数(%):
     表2に、各火災種別の出火件数の構成割合を示しました。「その他」を構成する出火件数が、歴年とともに大きくなっているのは気になりますが、これを度外視すれば、やはり「車両」の増加が顕著であることが明瞭です。いっぽう、減少しているとはいえ、「火事=住宅」という構図が引きつづき首位を占めていることも明らかです。


表 1  各火災についての出火件数の比較

暦年
各火災についての出火件数の比較(1950年:1) 人口の比較
全火災
建 物
林 野
車 両
船 舶
(1950年=1)
1950
1
1
1
1
1
1  
1955
1.56
1.43
1.58
4.37
1.88
1.07
1960
2.27
1.87
3.39
7.26
3.40
1.12
1965
2.81
2.08
6.75
8.27
3.50
1.18
1970
3.32
2.39
6.06
8.90
3.11
1.25
1975
3.23
2.31
4.75
6.55
2.43
1.35
1980
3.11
2.28
3.55
8.03
1.52
1.41
1985
3.11
2.21
3.58
10.61
1.52
1.45
1990
2.90
2.09
2.97
13.13
1.57
1.49
1995
3.27
2.07
3.51
14.83
1.23
1.51
2000
3.25
2.04
2.42
17.67
1.25
1.53

 

表 2  全火災の出火件数にたいする各火災の出火件数の比較(%)

暦年
全火災の出火件数にたいする各火災の出火件数の比較(%)
全火災
建 物
林 野
車 両
船 舶
その他
1950
100
86.6
6.0
2.4
0.5
4.4
1975
100
61.8
8.9
5.0
0.4
24.0
2000
100
54.5
4.5
13.3
0.2
27.5