2005.1.1

             
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リスクと生活

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火災事故のリスク50年(8)
《“放火”による火災は50年間で11倍に増加!》

主任研究員 武田篤彦


1. 基礎データ

  • 出火原因の種別: 「放火」、「放火の疑い」、「計」の3種別(火災年報=総務省消防局、1951年〜各年、ただし一部欠落)
  • 人口: 1)1955年〜2000年(日本長期統計要覧=日本統計協会)
        2)2001年〜(日本の統計(平成14年版)=総務省統計局) 

2. “放火”による火災件数の暦年経過

  • 種別「放火」と「放火の疑い」の取り扱い:
     両者を合計して“放火”として扱うことにし、図1に、“放火”と「放火の疑い」の暦年経過(1955年〜2001年)を示しました。“放火”と「放火の疑い」の差が、「放火」を表わしています。
  • “放火”件数の暦年推移:
     図1にみられるように、“放火”件数は1967年の2,054件から2001年の14,408件(7.1倍)まで、34年間に平均毎年363件の割合で、ほぼ直線的に増加しています。これは前年に比べて、毎年1日あたり平均1件増えている計算になります。なお、1981年〜1983年の「放火」件数の突出の理由は不明です。
  • 全火災件数と“放火”件数の暦年経過の比較:
     全火災件数に占める“放火”件数の割合を、図1に%で表示しました。また、全火災と“放火”の1956年の件数をそれぞれ1とした5年間隔の暦年推移を、表に示しました。さらに、得られた各暦年の全火災の比にたいする“放火”の比の割合を、計算して表に記入しました。全火災の暦年推移に比べて“放火”の増加傾向が顕著で、1956年に3.9%であった割合が増加をつづけ、1981年には15%、2001年には20%を超えて6倍近くになっています。
  • 放火1件あたりにかかわる人数:
     表に示しましたように、日本の人口は1956年の90,172,100から、2001年の127,291,000へと増加(1.4倍)しましたが、“放火”件数も、1,293件から14,408件に増加(11.1倍)しました。このため、人口を“放火”件数で除した“放火”1件あたりの人数は逆に激減して69,739人から8,835人となり、12.7%になってしまいました。その経過は、図2に示したように1980年までは直線的ですが、それ以後は緩やかに推移しています。
  • 放火魔の密度は推定できるでしょうか?:
     このように“放火”1件あたりの「被害」可能者数は現在のところ年間8,000人程度で、この減少傾向は最近やや鈍化しているのですが、1980年までほぼ直線的でした。また、この人数は同時に“放火”「加害」可能者数を指しているものでもあることに注意する必要があります。もちろん、“放火魔”と呼ばれる、一人で何件も実行する犯人もいるわけで、あまり確度の高い数字ではありません。いずれにせよ、火災の約20%が“放火”によるものだという現実には、ウンザリさせられます。






表 “放火”(=「放火」+「放火の疑い」)についての歴年推移の概要

暦年
全火災件数
“放火”件数
“放火”/
全火災(%)
人口
(×1,000)
人数/
“放火”1件
1956
33,312( 1 )
1,293( 1 )
3.9( 1 )
90,172
69,739
1961
47,106(1.41)
2,382( 1.84)
5.1(1.31)
94,287
39,583
1966
48,057(1.44)
2,045( 1.58)
4.3(1.10)
99,036
48,428
1971
64,019(1.92)
3,872( 2.99)
6.0(1.54)
106,100
27,402
1976
62,304(1.87)
4,465( 3.45)
7.2 (1.85)
113,094
25,329
1981
60,788(1.82)
8,821( 6.82)
14.5(3.72)
117,902
13,366
1986
63,272(1.90)
9,226( 7.14)
14.6(3.74)
121,660
13,187
1991
54,879(1.65)
9,596( 7.42)
17.5(4.49)
124,101
12,933
1996
64,066(1.92)
12,110( 9.37)
18.9(4.85)
125,864
10,393
2001
63,591(1.91)
14,408(11.14)
22.7(5.82)
127,291
8,835