2004.9.1

             
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リスクと生活

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火災事故のリスク50年(4)
《車両火災の死者は恐ろしく多い!》

主任研究員 武田篤彦


1. 基礎データ

  • 火災種別(合計、建物、林野、車両、船舶、航空機、その他)出火件数、死者数、負傷者数(火災年報消防庁)の統計数値のうち、出火件数の多い建物、林野、車両を使用 

2. 罹災1世帯あたりの罹災者数と死者数

  • 図に示すように、自動車の「車両」火災は1970年を過ぎるころから増加をはじめて1970年台半ばには「建物」のレベルに達し、そのまま推移しています。この変化は、つぎに述べる“死者比率(死者数を死傷者数で除した数値)”の経年推移からも、はっきりと認められます。「建物」と「林野」の経年変化には、目立ったものはありませんでした。

3.死者比率(死傷者数にたいする死者数の比率)

  • 図と表に、死者比率(死者数を死傷者数で除した数値)を載せましたが、火災種別3者には、それぞれ特徴のあることが認められます。
  • 注目すべきは「車両」で、1950年台の0.04からしだいに増加し、特に1960年台後半の0.1前後からは急増して1980年半ばに0.48へと、5倍近くに達してのち、0.45付近で推移しています。
  • よく知られている「建物」火災は、1950年台当初の0.08から緩やかに増加をつづけて2000年には0.17と2倍に達しました。山火事を指す「林野」火災の発生は、地形や季節、天候など多くの要因により複雑に左右されるため、死傷者の発生規模も大きく変動する傾向があり、1950年台は0.1を中心に±0.05程度で推移しています。今回、注目すべきは「車両」で、1950年台の0.04から次第に増加し、とくに1960年後半の0.1前後からは急増して1980年半ばに0.48へと5倍近くに達してのち、0.45付近で推移しています。
  • 表について、死傷者のうちで死者の占める割合を暦年の経過でみますと、「建物」では0.15程度ですが、「車両」では0.45と3倍近く大きいということが読みとれます。このことは出火すれば半数が死亡することを意味していて、引火性のガソリンを載せた“小さい鉄の箱”がいかに危険なものであるかを示しています。
  • それをさらに検討・解析するためには、登録されている「車両」(=自動車)の車種、台数、運転者・同乗者の年齢などのデータを援用する必要があります。

 

表 出火1件あたりの死者数および死者数と死傷者数の比
(( )内の数字は1952年を基準としたときの比)

(1)〔車両〕火災

暦年
出火件数
死者数
死傷者数
死者数/
出火件数
死者数/
死傷者数
1952
974( 1 )
5( 1 )
136( 1 ) 0.005( 1 ) 0.037( 1 )
1957 2,408(2.47)
8( 1.60)
200(1.47) 0.003(0.60) 0.040( 1.08)
1962 3,981(4.09)
21( 4.20)
183(1.35) 0.005(1.00) 0.115( 3.11)
1967 3,732(3.83)
25( 5.00)
264(1.94) 0.007(1.40) 0.095( 2.57)
1972 3,774(3.87) 120(24.00) 1,140(8.38) 0.032(6.40) 0.105( 2.84)
1977 3,392(3.48) 128(25.60) 357(2.63) 0.038(7.60) 0.359( 9.70)
1982 4,417(4.53) 210(42.00) 449(3.30) 0.048(9.60) 0.468(12.65)
1987 5,272(5.41) 206(41.00) 458(3.37) 0.039(7.80) 0.450(12.16)
1992 6,281(6.45) 227(45.40) 489(3.60) 0.036(7.20) 0.464(12.54)
1997 7,434(7.63) 242(48.40) 525(3.86) 0.033(6.60) 0.461(12.46)
2002 7,785(7.99) 336(67.20) 761(5.60) 0.043(8.60) 0.359( 9.70)


(2)〔建物〕火災

暦年
出火件数
死者数
死傷者数
死者数/
出火件数
死者数/
死傷者数
1952 18,350( 1 )
450( 1 )
8,025( 1 ) 0.025( 1 ) 0.056( 1 )
1957 26,170(1.43)
574(1.28)
7,330(0.91) 0.022(0.88) 0.078(1.39)
1962 33,532(1.83)
767(1.70)
8,762(1.09) 0.023(0.92) 0.088(1.57)
1967 35,687(1.94)
966(2.15)
9,361(1.17) 0.027(1.08) 0.103(1.84)
1972 38,868(2.12) 1,336(2.97) 9,509(1.18) 0.034(1.36) 0.140(2.50)
1977 39,302(2.14) 1,423(3.16) 9,031(1.13) 0.036(1.44) 0.158(2.82)
1982 36,996(2.02) 1,233(2.74) 8,366(1.04) 0.033(1.32) 0.147(2.77)
1987 36,515(1.99) 1,222(2.72) 7,888(1.04) 0.033(1.32) 0.155(2.63)
1992 33,532(1.83) 1,268(2.82) 7,405(0.92) 0.038(1.52) 0.171(3.05)
1997 34,519(1.88) 1,378(3.06) 7,886(0.98) 0.040(1.60) 0.175(3.13)
2002 39,171(1.86) 1,426(3.17) 8,842(1.10) 0.036(1.44) 0.161(2.88)


(3)〔林野〕火災

暦年
出火件数
死者数
死傷者数
死者数/
出火件数
死者数/
死傷者数
1952 1,501( 1 )  
3 ( 1 )
51( 1 )
0.002( 1 ) 0.059( 1 )
1957 2,844(1.89) 16( 5.33) 209(4.10) 0.006(3.00) 0.060(1.02)
1962 5,049(3.36) 31(10.33) 46(4.55) 0.006(3.00) 0.134(2.27)
1967 6,833(4.55) 46(15.33) 470(9.22) 0.007(3.50) 0.098(1.66)
1972 4,541(3.03) 32(10.67) 177(3.47) 0.007(3.50) 0.181(3.07)
1977 5,227(3.48) 32(10.67) 257(5.04) 0.006(3.00) 0.125(2.12)
1982 4,579(3.05)
16( 5.33) 244(4.78) 0.003(1.50) 0.066(1.12)
1987 4,120(2.74) 23( 7.67) 256(5.02) 0.006(3.00) 0.090(1.53)
1992 2,262(1.51) 20( 6.67)
93(1.82) 0.009(4.50) 0.215(3.64)
1997 3,766(2.51) 25( 8.33) 210(4.12) 0.007(3.50) 0.119(2.02)
2002 3,343(2.23) 17(5.67) 176(3.45) 0.005(2.50) 0.097(1.64)