火災事故のリスク50年(2)
主任研究員 武田篤彦
1. 基礎データ
人口(総務省統計局)
建物出火件数、死者数*1)、罹災者数、(総務省消防庁)
*1)「建物、林野、車両、船舶、航空機、その他」の各火災の合計ですが、その大部分は「建物」と考えられるため、この数値を仮に借用しています。
2. 出火1件あたりの罹災者数と死者数(グラフ参照)
- 出火1件あたりの罹災者数は、5.9人から2.6人へと1/2以上に低下していて、歴年に伴う家族の構成人数の低下を反映しているように見えます。
- いっぽうで同じ期間の死者数は、グラフの下部にあるためよくわかりませんが、0.02人から0.06人へとほぼ直線的に約3倍まで増加しましたので、罹災者の減少に伴う死者数の減少は、かなり相殺されてしまいました。
- また、この死者数を罹災者数と比較した結果(%)は、1954年の0.39%から1994年の2.05%へ直線的に増大し、5.3倍に達しています。このことは死亡リスクの増加は、僅かですが持続していることを示しています。
3. 1954年の数値を基準としたときの、いくつかの事項についての歴年比較を、下の表に示しました。
歴年
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出火件数
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人口10万あたりの
出火件数
|
出火10万件あたり・人口10万あたりの
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罹災者数
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死者数
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死者数/罹災者数
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1954 |
1
|
1
|
1
|
1
|
1
|
1964 |
1.49
|
1.35
|
0.77
|
1.22
|
1.59
|
1974 |
1.73
|
1.38
|
0.58
|
1.83
|
3.10
|
1984 |
1.69
|
1.24
|
0.53
|
2.13
|
4.46
|
1994 |
1.52
|
1.07
|
0.46
|
2.39
|
5.26
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1995*2) |
1.58
|
1.07
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0.52
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2.95
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5.74
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*2)阪神淡路大震災の災害を含む
- 出火件数は増大ののち横ばいとなっているのに対して、“人口10万あたり”では低下傾向にあるような印象を受けますが、それは人口の増加を反映しているためとおもわれます。
- この計算によっても、罹災者数の半減と死者数の3倍増により、6倍近い比率の増加が認められました。
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