1999.9.1

 
 
20億年まえの天然原子炉(オクロ)
--- 原子核分裂は自然界でおこっていた ---

  原子力発電に使うウランは、世界各地のウラン鉱山で掘り出されています。今から30年近くまえ、アフリカのガボン共和国オクロにあるウラン鉱山で、大むかしにウランの原子核反応が起こっていたことを示す研究結果が発表されました。

 地球が誕生したときからあるウランを含む岩石が、砕けて川の中に入って溜り、やがて埋もれてウラン鉱脈となりました。

 鉱脈から掘り出されたウラン鉱石は、そのままでは核反応しないウラン238と、中性子と反応してエネルギーを放出する(“燃える”といっています)ウラン235を含んでいます。その大部分はウラン238で占められ、“燃える”ウランは、ごく僅かです。

 原子力発電に役立つのはウラン235ですから、鉱石から取り出したウランから、ウラン235が3〜4%になるまで濃くしてから核反応させて(“燃やして”)います。

 ウラン235の濃度は、今は0.720%しかありませんが、20億年まえには、どこでも3.44%もありました。しかもその上、オクロの鉱脈は、それがたくさん溜まってできたため、原子核反応が自然に起こったのだと考えられています。

 その証拠となるのは、ここのウラン235の濃度が0.717%と、他の鉱山の0.720%よりわずかですが低いことです。これは、ウラン235が20億年まえの原子核反応で消費されたためだと解釈できます。

 ここの“天然”原子炉は、16カ所で100万年以上も反応を続けました。そのうちの6カ所で出されたエネルギーは、大型原子力発電装置の8基が作り出す電気の量にあたると考えられていますが、それは2千万世帯が生活に使っている電気の合計量に相当します。何とも贅沢で、もったいないお話です。

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