Books (環境と健康Vol.28
No. 4より)
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小林道憲 著 芸術学事始め−宇宙を招くもの |
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中央公論新社 ¥1,800+税 |
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本書はプロローグで、自然と一体化した身体運動としての幼児画に注目し、芸術表現の根源は、自然運動のリズムに共鳴した模倣にあるとする。先ず芸術の祝祭的起源を論じ、続いて芸術の本質を「宇宙生命の表現」とし、芸術を創作者の立場と鑑賞者の視点から検証した後、現代芸術に対して、「抽象を推し進めるあまり自然から離反してしまったもの」としての批判的考察を行っている。すなわち芸術は人為的な創作であるとはいえ、宇宙的創造の延長線上にあるとの視点である。 芸術は、自然の多様性を模倣する創造的活動の中で、自然の動と静、あらゆる形から本質を取出し抽象化する感性の働きである。他方現代科学は、自然の中から普遍的な法則を発見して、その総体として自然の真理に近づこうとする理性の働きである。すなわち芸術と科学の視点は互いに相補的である。ともに「自然の本質」の理解に向けた努力が限りなく続けられることであろうが、両者が車の両輪として働くとき、個々の人生をより豊かにするに違いないと思う。 山岸秀夫(編集委員)
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