Books (環境と健康Vol.28
No. 2より)
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リチャード・ドーキンス 著(吉成真由美 編・訳) 『進化とは何か−ドーキンス博士の特別講義』 |
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(株)早川書房 ¥1,700+税 |
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先に「利己的な遺伝子」で、生物は DNA のメッセンジャーに過ぎないとしてセンセーションを起こした動物行動研究者ドーキンス博士が、英国王立研究所で十代の子供たちに行ったクリスマス・レクチャーを、日本でも行った際の記録を中心に編集された書物である。先ず驚いたのは、欧米では我々の常識であるダーウインの進化論ではなく、神が万物を創造したとする「創造説」が残っていることで、ドーキンス博士の懇切な進化論の解説もこのような迷信に対するチャレンジであるとのことである。 本書の内容はほぼ我々の知識の範囲で特に目新しいものではないが、豊富な実例の写真と平易な解説で、進化に関する疑問を丁寧に解きほぐしてくれる。私も臨床医として人体の進化の失敗をいくつか見てきており、もし神様が人体を作ったのならもう少しうまくできたのにと思う個所もあるので、本書の説明に同感である。すなわち進化には特別な目的はなく、たまたま生じたその生物の生存に有利な点を積み重ねていった結果が、現在の生物の姿ととらえる点で、たとえば哺乳類の眼と昆虫の眼とは全く異なる構造であるが、それぞれが完成された域に達していることなどとされている。 なかでも納得した説明の一つに、生物はそれぞれ別々の進化の峰をよじ登ってピークに到達しようとするくだりであり、近いけれども別の峰の頂上にいるチンパンジーはいくら進化をしても人間にはなれないことが納得できる。しかし人類だけが宇宙に匹敵する脳を作り上げたきっかけは何であったのか、いくつかの仮説が紹介されているが、私には納得できるものがなく、この点だけは神様が自分の姿を見せようとたくらんだのではないかとさえ思えてくる。 本庄巌(編集委員)
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