Books (環境と健康Vol.27
No. 4より)
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大島伸一 著 超高齢社会の医療のかたち、国のかたち |
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(株)グリーンプレス ¥1,400+税 |
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本書は、上記の「超高齢社会」に達した世界一のわが国高齢大国が、小さくとも豊かな国を実現するためにはどうすれば良いかについて、医療を通してみた「長生きを喜べる社会への構造転換」の提言である。ここではその主なものを以下に取り上げる。 第 1 の論点は、高齢者を「社会的負担を増加させる元凶」ととらえるのでなく、その能力をむしろ「最高の資源」として活かし、「長生きを全世代が喜べる社会」にすることである。そのためには、(1)定年制などにより、高齢者から元気を奪わないで、(2)助けが必要な時には、気兼ねせずに支援を受けることが出来るような社会の構築である。第 2 の論点は、人口規模が減っても、世界一の高齢化から生まれる需要を、来るべき巨大な世界市場の幕開けとして捉え、これまでの大量生産、大量消費時代とは異なる、新しい介護などの技術革新に活かすことである。第 3 の論点は、地域全体が連携して高齢者を支えるシステムの構築であり、その核となる総合診療医の養成であり、その必要性は既に本誌前号 Editorial でも論じられている。第 4 の論点は、高齢者同士が主体的に互いに助け合う仕組みを作り、公的な支援や家族の支援と組み合わせていくことである。すなわち高齢者間で連帯できる組織を地域に作り、新しい街の文化を作り上げていくのである。 最後に、成長一辺倒でなく、「全世代が共存できる、人だけでなくモノとも自然とも科学技術とも共存できる、老いや病とも共存できる、共生の新しい価値観」に基づく、未知なる超高齢社会への数々の挑戦に期待を込めて、結んでいる。
山岸秀夫(編集委員)
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