Books (環境と健康Vol.27
No. 3より)
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長田攻一、田所承己 編著 つながる/つながらないの社会学 |
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(株)弘文堂 ¥2,200+税 |
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本書は、早稲田大学文学部社会学専攻の関係者が協力してまとめられた、現代社会の変容する人間関係の考察である。すなわち格差社会が拡大し、「無縁社会」や「孤独化」に代表されるような、社会的に孤立した個人の状況が「とても他人事とは思えない」という実感が社会全体に広がっている。そこで人と人との「つながり方」を、(1)社会関係の個人化と(2)連帯の足場作りという 2 本の補助線を用いて、各論考を編集し、現代社会の変容に対応した「つながり」の多角的なアプローチを模索している。 伝統社会から産業社会へのシフトの中で、血縁や地縁の様な「選べないつながり」から、社縁のような「選べるつながり」へと変容する中でも、各種集団が様々なリスクから個人を守ってきた。しかし産業社会が情報社会へと自己解体する第二の近代では、核家族化とグローバル化によって従来の血縁・地縁・社縁が希薄となって、人と人とが「つながらず」、様々なリスクに個人単位で対処しなければならない事態となった。すなわちインターネットでつながる情報社会では、時間が特定の空間から切り離され、時間を越えた物事の調整が可能となり、ローカルな対面的な人間関係から、位置的に隔てられた他者との関係が発達することになった。そこで環境問題などのリスクへの対処に見られるように、人と人とは「不安に基づくつながり」として行動し、ある局面では「人類としてのつながり」も意識させる段階まで重層的な展開を示している。すなわち「つながる」と「つながらない」の間の「多様な弱いつながり」として、新たな人間関係が再構築されつつあると現状をとらえている。 評者には、本書によって喚起された思い出がある。1987 年にかつての留学先の恩師、A.D. ハーシー(1908−1997)のニューヨークの自宅を訪問した時、80 歳の老境にして、「ガーデニングとコンピューターミュージック」の世界を趣味とされていた。ガーデニングは個人的な、必ずしも「つながらない」趣味であり、コンピューターミュージックは多くの演奏家をバーチャルに接続して「つながる」指揮者の世界である。20 世紀中葉の分子生物学の先駆けとなられた恩師は、その後の趣味の世界でも、既に新世紀のインターネット・コミュニケーションの先駆けを楽しんでおられたのである。山岸秀夫(編集委員)
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