Books (環境と健康Vol.26
No. 4より)
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橘木俊詔 著 「幸せ」の経済学 |
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(株)岩波書店 ¥ 1,700+税 |
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一般的には、幸福(しあわせ)とは個人の生活への主観的な満足度であるとされているので、当然その消費生活の豊かさが関係し、消費を保証するための高い所得が前提とされる。しかし本書では、人の幸福度に関する心理的要因を考慮して、「幸せ」は必ずしも消費や所得の最大化だけで得られないことを主張している。 国際的にも幸福度を測る指標として、経済活動だけでなく、福祉などの消費サービス、自然保護の環境問題などを組み入れる動きが強まってきている。国際比較研究で、幸福度が世界第 1 位とされているデンマークの特徴は、所得格差が小さい上に比較的高い所得と充実した福祉である。また経済的に貧困なブータンでの高い幸福度は、経済的な豊かさは必ずしも人の幸福に結びつかない例である。しかしながらこの国でも、情報のグローバル化によって、若者の間に国際的な経済的格差が実感されるにつれて、その幸福度が低下しつつあるのも現実である。日本の幸福度の意識調査では、高い所得と教育、健康、女性であることなどが幸福度を高める要因とされている。しかし先進諸国では所得格差が拡大する中で貧困層が増加して、幸福度を下げているので、税や社会保障と教育政策による富の再分配が行われている。 そこで著者は、少子高齢化の進行する日本での今後の課題として、右肩上がりの経済成長社会から定常型経済社会への転換を提唱し、幸せな「働き方、遊び方」に向けた社会保障制度の充実が重要であるとしている。山岸秀夫(編集委員)
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