Books (環境と健康Vol.26
No. 4より)
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大友芳恵 著 低所得高齢者の生活と尊厳軽視の実態−死にゆきかたを選べない人びと |
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(株)法律文化社 ¥ 3100+税 |
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著者は、特別養護老人ホーム生活指導員としての長年に亘る経験を活かして、少子高齢化と経済的格差社会の中で、アリのように働き続けたあげくキリギリスのように果てていく低所得高齢者(年額 150 万円以下、75 歳以上)の実態を統計資料でなくライフストーリーとして明らかにしているところに特色がある。 先ず都市部における在宅高齢者の生活実態に関しては、居宅介護支援事務所のケアマネージャーの協力を得て、2006 年に A 市内の一人暮らし高齢者数の 1 %にあたる 1,300 名にアンケートを発送し、回収された 342 名の集計解析を行っている。その中の 50 名に関しては、2007 年 10 月から翌年 1 月にかけて各 1 時間半程度のインタビューを実施した。ここでは、青年期に戦争を経験して、成人期の高度経済成長の中でひたすら働けども低所得状況を余儀なくされた挙句、多くを望まず声をひそめて生きている姿が示されており、「高齢者イコール金持ち老人」という「偽りのリアリティ」に一石を投じている。 山岸秀夫(編集委員)
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