Books (環境と健康Vol.25
No. 1より)
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谷口輝世子 著 子どもがひとりで遊べない国、アメリカ |
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(株)生活書院 ¥ 1,500 +税 |
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本書は、アメリカ・ミシガン州の中流家庭の多い郊外に住み、2 人の小学生を育てている母親の現地レポートである。本来子どもは仲間がいて広場と時間があれば、仲よく遊ぶ中でおのずと社会ルールを学び、自立心を育てる。ところがアメリカ社会では、1980 年代になって働く母親の増加とともに、子供の誘拐や殺人のマスコミ報道が広がり、育児の「安全・安心」が過度に優先されるようになり、子供の遊びにも大人の監視が義務付けられる州が増えてきた。この「安全・安心」の風潮は、徐々にわが国にも及びつつある。子どもの本当の安全は、仲間との遊びの中で育つ判断力や自律心によるところが多く、大人の保護だけでは守りきれるものではない。子どもだけの冒険的に見える行動も自立心の育成という恩恵に対する対価としてのリスクと考えてもよいのではなかろうか。 本来アメリカは格差社会で、富裕層、中流層、貧困層の棲み分けがなされている。貧困層では、育児放棄のケースも多い。ところが実際には、貧困層の子どもの方が中流層の子どもよりバランスのとれた遊びや活動が出来ているという調査結果も示されている。すなわちダンボールなどの工作道具を与えて、両者のグループに「自分たちの街」を作らせたところ、前者の方がグループ内の会話が多く、病院や図書館などを含むコミュニティーを形成していたが、後者のグループ内には会話が少なく、公共施設も見られなかったとのことである。今後グローバルに助け合う社会の形成という観点からは、「安全・安心」に関して再考すべき問題を提起している。
山岸秀夫(編集委員)
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