Books (環境と健康Vol.24
No. 4より)
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外川 淳 著 天災と復興の日本史 |
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東洋経済新聞社 ¥ 1,500 +税 |
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本書は地震学者ではなく、歴史学者が史料に残された西暦 416 年以降の日本の大きな天災として、地震、津波、火山噴火などによる災害100 件を年表として記し、その主なもの 14 件を取り上げ、それぞれの災害からの復興のエピソードを記録したものである。その最初のものは 830 年の天長出羽地震であり、1923 年の関東大震災で終わっている。しかしその残された資料は極めて少ない。人々の災害の恐怖は忘れられやすく、記録されていないのである。天災の予知は難しいが、天災から立ち上がる復興については過去の歴史に学ぶところは多いはずである。 古代では、天災を天が与えた権力者への警鐘として素朴に受け止め、自然神を祀ったり、被災者の課税を免除したり、生活困窮者に物資援助を行った記録はあるが、中世に入ると、災害復興を好機ととらえて、寺社建設などの復興事業で景気刺激を行ったり、その失政によって政権が崩壊するなどの例が取り上げられている。1783 年の天明浅間山大噴火のさいには、賃金供与による生活支援などの記録もある。しかし災害の度に復興し、人々が村を離れた例は少なかった。現代に入って、1888 年の磐梯山大噴火の際には、日本初の被災者に対する義捐金募集の記録がある。震災復興に当っては様々な利害が絡み、例外なく請負業者への復興資金の流出がある。今回の東北大震災に関しても、今後の復興の問題としては、国や地方自治体が主体となるのか、地域の歴史を踏まえて研究者を巻き込んだ市民サイドが主体となるのかが問われている。その為にも、災害から復興への過程は風化してしまいやすいので、まず各地の災害や復興の教訓をテーマとした資料館の開設を始めるべきであり、既設の「道の駅」やJR の停車駅に併設することも考えられる。天災は食い止められなくとも、災害はローカルな特性を持っているので、その記録を残すことはその地の将来に備えることになる。災害博物館を一時の見世物の場とするのでなく、地域の防災教育の場とすることを提唱している。災害から身を守るには、津波を防ぐ高い防潮堤の建設よりも、過去の歴史に学んだ地域住民の強い絆の方が重要である。
山岸秀夫(編集委員)
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