Books (環境と健康Vol.24
No. 4より)
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中西 進 著 こころの日本文化史 |
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岩波書店 ¥ 1,800 +税 |
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本書は、歴史の細部に捉われず、過去 2000 年に亘る日本の歴史を、望遠鏡で眺めた斬新な歴史観である。すなわち前古代の縄文、弥生の文化を基層として出発した日本の歴史を、ほぼ 700 年の周期に分け、古代、中世、現代と展開したとする。各周期の文化は前半何世紀かの移行・生成の動乱期とその後の達成期に分かれる。古代は飛鳥時代から平安時代まで、中世は鎌倉時代から江戸時代で終わり、現代は 19 世紀末の明治期に発したので、23 世紀まであと少なくとも 200 年の動乱期を待って、第 3 の達成期の日本が生まれることになる。 古代文化は自然の姿を心に映す芸術中心の「情の文化」で、大自然の秩序を直視した公家文化でもあった。中世文化は武訓と商知の「知の文化」で、自然に備わった倫理を学ぶ武家文化と言えよう。現代文化は自然を所有しようとする「意(志)の文化」であるが、まだその形成期であり、移行の動乱期である。その数百年後の達成期の文化は想像すべくもないが、日本人の「こころ」の深層には、「モノ」の霊力(超自然的力)を信ずる縄文的情念があるとする。 現代日本の文化は、官僚主導の富国強兵に発したが、性善、民主を重んずる孟子の非戦論に学び、「新国家は礼節をもって立国すべし」と唱える中江兆民(1847〜1901) や、「真善美日本人」を著し、「諸外大国と競うのはやめよ」と主張した三宅雪嶺 (1860〜1945)の存在を忘れてはならない。原子力や遺伝子力の評価を巡って国論が二分されている現在はまだ助走の段階であり、善を行う意志の時代としての民主立国を目指し、困難に耐えながら第 3 の達成期の国づくりに励むことを期待して、本書は閉じられている。いずれにせよ、「進む」にも、「退く」にも、「意の文化」が問われている。
山岸秀夫(編集委員)
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