Books (環境と健康Vol.22
No. 2より)
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相原由花 著 香りとタッチングで患者を癒す臨床アロマセラピストになる |
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BAB ジャパン ¥1,800 +税 |
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本書は、2009 年 1 月末に開催された京都健康フォーラム五感シリーズの最終回、「五感のはたらき−いのちに触れる」の講演者として招待された著者から献本された。当日の演題は「五感を総動員するアロマセラピー」であり、その休憩時間には、健康サロンさながらに、アロマセラピーを実際に体感する場が設けられ、体験者から一様に気持ちがよかったとの感想がもらされていた。五感シリーズ第 1 回フォーラムの成果として出版された「香りでこころとからだを快適に」(オフィスエム、2007 年)の中でも、メディカル(臨床)アロマセラピーが今西二郎氏により紹介されている。すなわち病気の症状の緩和を目的として、種々の芳香植物から抽出された精油を用いて行うマッサージである。そこでは、臨床アロマセラピーは医療の補助的手段であるので、そのEBM(実証に基づく医療)としての効果判定には独特の臨床試験の方法の開発が必要とされている。 本書はその独特の臨床試験に関する EBM への NBM(患者の物語に基づく医療)からの答えである。すなわち臨床アロマセラピーには一般的な処方箋はなく、同じ病名の患者に対しても患者一人ひとりに合った処方が要求される個別性の高いものである。本書には著者が体験した多くの物語がつづられている。そこでは、「香りのもつ心理効果」と「精油のもつ薬理作用」と「オイルマッサージによるタッチの効用」を組み合わせ、個々の患者に寄り添って、こころ(mind)の痛み、身体(body)の痛み、魂(spirit)の痛みを和らげることを目的としている。多くの物語の中から、ここでは慢性疼痛と摂食障害からの回復に注目したい。 評者には、停年退職後のストレスによる摂食障害から寝たきりになり、床擦れに発した全身の慢性疼痛に苦しみながらも認知症にならず、11 年の闘病生活の後亡くなった親友があった。その間ほぼ毎月見舞い、元気付けた。初期の頃は別れ際に握手を交わしていたが、やがて痛みのため握手が出来なくなり、目線を交わすだけとなった。数々の医療機関を転院したが、いずれも対症療法のみで、最後まで彼を社会復帰させる有効な治療法は見つからず、現代医療では原因不明の難病とされた。本年秋の親友の一周忌に、同窓生で偲ぶ会を開く。今更ながら、本書に描かれている臨床アロマセラピーは、このような痛みに苦しむ患者にでも寄り添って「タッチ」し、快食と快便への喜びに希望をつなげてくれるように思える。 本書の題名は臨床アロマチストの資格を得るためのハウ・ツーものと誤解されかねないが、実は読者の一人ひとりに届ける「命のそばで寄り添う介護の物語」である。
山岸秀夫(編集委員)
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